「偏愛スニーカー三番勝負」とは…… スニーカーをひとつのカルチャーとして根付かせ、熱狂させるほどの存在へと押し上げた背景には、ヒップホップカルチャーとの蜜月関係によるところが大きい。
日本のヒップホップシーンを長らく牽引してきたラッパー、AK-69さんもまた、それを骨の髄まで感じているひとり。そんな彼が今もっとも夢中になっている3足を教えてもらった。
AK-69(エーケーシックスティナイン)●1978年生まれ、愛知県出身。17歳でヒップホップと出合い、2003年、Kalassy Nikoffとしてデビュー。「THE CARTEL FROM STREETS」(2009年)、「THE RED MAGIC」(2011年)と2作のアルバムがゴールドディスクを獲得。これまでに4度の日本武道館公演を成功させ、2016年には伝説的なアメリカのヒップホップレーベル「Def Jam Recordings」と契約を果たした。2020年には地元愛知のシンボルであり重要文化財でもある名古屋城での配信ライブを成功させるなど、長きに渡りジャパニーズヒップホップシーンの先頭を走り続けている。
【1足目】ディオール×エア ジョーダン「エア ジョーダン 1 OG ディオール」
「スニーカーは確かに好きです。B-BOYにとっては欠かせないアイテムですから。ただ、僕はコレクターではない。パッと見て良かったら履く、もうそれだけなんですよ」。
そう語るAK-69さんだが、ナイキにおいては特別な想いがあるという。
「まず、B-BOYとしてナイキは基本の基本。なかでもジョーダンシリーズのエア ジョーダン1は、絶対的な存在であり続けていますよね」。
エア ジョーダン 1といえば、これまでのスニーカー史に燦然と輝く、言わずと知れたキング・オブ・スニーカーである。その凄さをAK-69さんは次のように語る。
「復刻しては終了し、また復刻。これまでそのサイクルを何度も繰り返していますけど、その都度シーンを賑わせている。これだけ長く、しかも時代も世代も超越して刺激する存在ってそうそうないですよね。
ナイキのハイテクモデルに比べたら、履き心地はローテクだなって感じはしますけど、それも含めて愛おしく感じますよね」。
そして、「発売当時は衝撃だった」と語るのがこちら。ディオールがナイキと展開したカプセルコレクションの中でも、とりわけ話題を集めた、通称“エア ディオール”である。
2020年6月に発売され、わずか8000足の枠に約500万人が殺到したという前代未聞の“大事件”を巻き起こしたことでも有名だ。
アッパーには高級なイタリア製レザーを贅沢に使い、お馴染みのスウッシュロゴはディオールのオブリーク柄をあしらっている。
エア ジョーダンのウィングロゴも“AIR DIOR”に変わっている。
「昨今のキム・ジョーンズ氏しかり、先日亡くなられたヴァージル・アブロー氏しかり、ストリートカルチャーを心得ているデザイナーが、いわゆるメゾンブランドのデザイナーに就任してきた昨今のファッションシーンを端的に表すスニーカー。ストリートの気持ちと、モードの味わいの両方を感じられるというのが気に入っていますね」。
これまで、あらゆるコラボアイテムに出合ってきた男でも、この異端コラボには相当興奮を覚えた様子だ。
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