年間約250本ものコレクション取材をするファッションジャーナリストの増田海治郎さん。彼がいま伝えたいのは 「ヴァージルは“大人ストリート”である」ということだ。
年齢で、地域で、文化で、スタイルはもう決めつけない!
ヴァージル・アブローが手掛けたルイ・ヴィトンのパリ、東京でのファッションショーのすべてをこの眼で見てきた。
ヴァージルは紛れもなくラグジュアリーとストリートを融合させた“ラグジュアリー・ストリート”の火付け役のひとり。
今年の1月に映像形式で発表された2021-’22 年秋冬コレクションは、ヴァージルの考える多様性を体現したメッセージ性の強いものだった。
侍や剣道などの和のモチーフ、1970〜’80 年代の黎明期のヒップホップ、ウエスタンや旅を連想させるアイテム、独創的なテーラード、アフリカの民族衣装……などが渾然一体となったコレクションは、まるでさまざまな文化が共生するパリの街のよう。
「多様性とは自分の文化だけでなく他の文化にも目を向け共有すること」という彼のメッセージは、視野の狭い“文化の盗用”とは違うグローバルな視点を感じた。
世界中を飛び回りながら、自分が影響を受けたカルチャーと現在進行形で影響を受けたカルチャーを自在に組み合わせるスタンスはストリートそのものだと膝を打った。
ストリートは若者のためのもの、というイメージがある人もいるかもしれない。でも作り手のヴァージルも40歳、今は年齢でスタイルを区切る時代ではない。
ヴァージルの“大人ストリート”、最高ですよ!
川西章紀=写真 菊池陽之介、来田拓也=スタイリング 増田海治郎=文