What’s AIR JORDAN Vol.1
2021.01.07
FASHION

「好きすぎて履けなくなったエア ジョーダン 1」渡辺真史さんのモノ語り

「What’s AIR JORDAN」とは……

どこの世界にも定番を超越したアイコンがあるものだが、さしずめストリートファッションなら「エア ジョーダン 1」の存在を忘れちゃいけない。

ベドウィン & ザ ハートブレイカーズの渡辺真史さんも長年「エア ジョーダン 1」に魅了されている一人だ。

渡辺真史さん
渡辺真史●ベドウィン & ザ ハートブレイカーズのディレクター。1971年生まれ、東京出身。先日、リニューアルしたMIYASHITA PARKに、スニーカーを中心としたセレクトショップ「デイズ」をオープン。ジョーダン ブランドも扱っている。

あまりにも好きで「エア ジョーダン 1」が履けなくなるまで

数あるナイキのスニーカーの中でも「エア ジョーダン 1」には特別な思い入れがあるという渡辺さん。実際に何足か持っていると言うが……。

「でも、基本的には履かないんです。なんだろ、骨董品やアートに近い感覚なんですよね。かと言って観賞用でもないから飾ることもない。たまに倉庫から出して見て、おお!みたいな(笑)」。

渡辺さんが所有する「エア ジョーダン 1」コレクションの一部。
渡辺さんの「エア ジョーダン 1」コレクションの一部。履かないつもりだが、サイズはすべてマイサイズで。

渡辺さんにスニーカー遍歴について聞くと、「エア ジョーダン 1」に辿り着くまでにはそれなりの道のりがあったことがわかる。

「ナイキの原体験ってことなら小学生まで遡るのかな? 友達はアディダスやプーマ派が多かったんだけど、当時の僕は、まだ新興ブランドだったナイキが気になってたんですよね。

単純にモノが格好いいってのもあったけど、たのきんトリオがこぞってナイキを履いてたりと、子供ながらにほかのブランドにはない魅力があって」。

そんな渡辺さんが初めてハマったナイキは「ブレーザー」。1980年代のダンスシーンではキャンバス素材のモデルが流行っていて、彼自身もブレイクダンスをやっていたためにチェックしたとか。その後「エア フォース 1」などの名作はひと通り試したという。

で、今回の主役「エア ジョーダン 1」との出合いはいつ?

「1985年の発売当時は魅力に気付いていませんでした。14〜15歳でしたし。もうちょっと経ってからですね、出合いは。ストリートで支持され始めて自然に知りました。

以来、いろいろ履いてもきましたが、15年程前から、あまりにも好き過ぎて履けなくなってしまったんです(笑)」。

なぜなら、あらゆるブランドのスニーカーと比較して「エア ジョーダン 1」の存在は別格だからだ。

「誰もが知る金字塔的な傑作がいくつもあるナイキの中でも、『エア ジョーダン 1』に勝るアイコンは存在しない、というのが個人的な見解。最近Netflixで『マイケル・ジョーダン:ラストダンス』を観て、その価値を再認識。“ジョーダン・ブーム”が再燃しちゃいましたね」。

シカゴ・ブルズを2度目の3連覇に導いた1997-98シーズンにスポットを当てたこの作品では、「エア ジョーダン 1」を履いたマイケル・ジョーダンの勇姿が確認できる。

「言うまでもないけど、このスニーカーの価値を誰よりも高めたのはジョーダン本人で、やっぱり彼がプレー中に履いている姿がいちばん格好いい。

あえてそのストーリーを切り離してプロダクトとしての『エア ジョーダン 1』の魅力を挙げるなら、ソールが薄くて、木型がシュッとしているところが好きですね」。

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再び履くためにレフリーカラーを選んだものの……

「僕の場合、スニーカーとの付き合い方は“すべて同じ”じゃないんです。たとえば、何もケアにせずに履き潰したほうが格好いいと思うスニーカーもあれば、常にきれいな状態を維持しておきたいスニーカーもある。『エア ジョーダン 1』は完全に後者ですね」。

そんな理由から、渡辺さんは「エア ジョーダン 1」を履けなくなってしまった。

グッドコンディションで手にすることができた「エア ジョーダン 1 レトロ」。汚れたら磨いて、を繰り返すうちに再び履けない症候群に。

「でも……急に履きたくなることはあるんです。先程の“ラストダンス”を観たときもそう。無性に履きたい衝動に駆られましたね(笑)。それで、80年代のカルチャーにも通じる“レフリーカラー”に的を絞って何足か買ってみたんです。それでも新品をおろすのは抵抗があるから、あえて中古で(笑)」。

レフリーカラーとは、簡単にいえば白×黒の配色のこと。そんな「エア ジョーダン 1」なら、コーディネイトも選ばないだろうという算段もあったのだが……。

いずれ着用することを想定して購入したという2足。だが、靴紐すら通していないモノも。

「いざ履いたら汚れる度に気になっちゃって。その都度キレイに磨いてたんですが、結局、履けない“天井スニーカー”になりました(笑)」。

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プレミアよりも、持ってることの幸せを

今では10足前後の「エア ジョーダン 1」を所有している渡辺さん。コレクトの基準は2つある。

「僕はプレミアは一切気にしていなくて、自分が所有したいと思えるかどうか、そこをいちばん大切にしています。今後も無闇に買い漁ることはないですね。レフリーカラー以外だとオリジナルカラーに近い復刻モデルを選んでいます。

ファンの間では“シカゴ”のニックネームで呼ばれる配色。1985年に16色発売されたオリジナルカラーを復刻したモデル。

ディテールに関しても、オリジナルを忠実に再現しているほど理想的。完成した「エア ジョーダン 1」のデザインに余計なアレンジを加える必要はない、というのが渡辺さんの考えだ。

いわゆる“ブレッド”のカラーリングも含め2足のセット販売されたモデル。箱もしっかり残っている。

「正直、シュータンのジャンプマンもいないほうが理想的。だから、もしも別注の依頼をいただいても、僕には何にもできないと思います(笑)」。

ただ単純に好きだから所有したい。渡辺さんの「エア ジョーダン 1」に対する考えは至ってシンプルだ。

「収納するにしても場所を取るし、傍から見たら本当に無駄な買い物をしていると思われるかもしれませんが、僕は“所有すること”で満たされている部分が少なからずある。ジョーダンはストリートカルチャーにおける揺るぎないブランドのひとつですし」。

スニーカーは、ユーザーの想いが重なることで新たな価値を持つ。「エア ジョーダン 1」は、昨今のスニーカーブームの本質を示す稀有な存在だといえるだろう。
 

What’s AIR JORDAN●オークションではマイケル・ジョーダン本人が着用していた「エア ジョーダン 1」が61万5000ドル(約6600万円)で落札。彼が現役引退してからも派生モデルは増殖し、比例するように熱狂的マニアも後を断たず。エア ジョーダンって一体、なんなんだ?上に戻る

鳥居健次郎=写真 戸叶庸之=編集・文

# ナイキ# エア ジョーダン# スニーカ―# 渡辺真史
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