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2020.05.19

ファッション

料亭で食べる朝粥的味わい。シンプルなのに深いエルメスのTシャツ

今の世の中にはおいしいものが溢れている。セレブはもちろん知り合いのインスタにだって、数々のグルメが続々とアップ。
濃厚で複雑で華美なおいしさというのは、味わった瞬間は確かに感動する。でも年のせいかもしれないが、もっとシンプルな味に惹かれるようになってきたのだ。
そんな味を服にたとえれば、このエルメスのTシャツが筆頭ではないだろうか。
「Tシャツ」美しい水色は今季のシーズンカラーのマリン/エルメス
美しい水色は今季のシーズンカラーのマリン。これからの季節に打ってつけの爽やかな色みだ。各4万1000円/エルメス(エルメスジャポン 03-3569-3300)
薄すぎず厚すぎず、滑らかで着心地抜群のコットンジャージー素材。1枚ではもちろんインナーとしてもコーディネイトしやすいように設定したボックスシルエットの適度なフィット感。胸ポケットの大きさと配置も絶妙で、裾両脇に入るわずかなスリットもいい感じだ。
そして唯一の、きわめてさりげないデザイン要素が両肩の部分。そのステッチをサイドから見ると、エルメスの頭文字である“H”になっているのだ(蛇足ながら服好きのミクロ視点で見れば、ステッチ自体の緻密さにも驚かされる)。
毎シーズンリリースされる定番色は白、黒、ネイビーの3色。こちらもぜひワードローブに揃えていただきたい。
このTシャツ、言ってみれば老舗料亭で出される朝粥のようなものか。丁寧に炊いた粥と出汁入りの葛餡。きわめてシンプルだが、素材の良さと確かな仕事から生まれるその味わいはどこまでも誠実である。
毎シーズン少しずつ素材やデザインを変えながら、ファンに長年愛され続けているこのTシャツ。その事実はとりもなおさず、エルメスのもの作りの誠実さの証明であろう。
 
清水健吾=写真 来田拓也=スタイリング 加瀬友重=文


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