ハロー、こちらラジオエルメス。9月は耳で楽しむエルメスにStay Tuned！

「ラジオから届く人の声の温かみには、職人の手仕事によるエルメスのクリエイションに通じる魅力がある」。このたび実施する期間限定のラジオ局について、エルメスから届いた言葉。
確かに。シンプルなテーラードジャケットは超軽量なヴァージンウール仕立て。胸ポケットにはカーフレザーのパイピングがあり、同様のレザーが、サイドポケットの内側にも貼られている。手に取り、袖を通すことで気がつく、デザイナーが込めた心遣い。その温もりに、心が動く。
 

キメの細かいカーフスエードのアッパーに映える、オレンジのレザーパイピング。実はこれ、特殊な加工を施すことでリフレクターとなっているのだ。
そして、アウトドアギアを思わせるパラコード風のシューレース。アウトソールに目を配れば、メゾンのイニシャル「H」が連なっている。エレガントな世界に込めた、カジュアルな遊び心。こうしたウイットも、エルメスが得意とするところだ。

ノーベルトではくサイドアジャスター付きのレザーパンツ。ワンタック入りでゆとりを持たせたシルエットの一本は、独特の落ち着きを放っている。
そこに、カシミヤのニットをタックイン。一見するとアヴァンギャルドな着こなしが大人に馴染むのは、品のあるオリーブグリーンの色みと素材感によるものだ。常に新しい価値を届けることはモードの使命のひとつ。今回の「ラジオエルメス」も、その延長にあるに違いない。
 

ONとOFF。人にはスイッチを入れる瞬間があり、その習慣というのもある。たとえば、タイを締めるとき。オレンジと青のレジメンタルストライプの一本を手に取り、キュッとノットを上げる。すると、普段は見えない小剣側に、ストライプの“始まり”のピンジャックがエルメスのボックスに刺さったビジュアルが現れる。
ノイズなし、感度良好なグッドデザイン。自分のスイッチが入ったらヘッドフォンをして、今日の第一声を届けよう。
 

「ラジオエルメス」からは、たくさんの音楽が届けられる予定だが、今季コレクションにも音楽にまつわるデザインは豊富。定番のスカーフにも。ダブルネックのギターが取り囲むのは木製のターンテーブルで、その中央がライブハウスに。ステージに立つバンドのメンバーと観客は擬人化された馬である。
ファンタジーの世界は、ファッションにも音楽にも必要だ。メゾンからのそんなメッセージをTシャツの上からさらりと纏う。カシミヤシルクの優しい肌触りが心地良い。
 

このレザーブルゾンを“ただのストライプ”の一着だと思ったら大間違い。驚くほどの手間と時間をかけて作られているのだ。銀面に小さな穴を開け、裏側のシアリング部分を表に引き出し、均一にカットする。こうして、立体的で、質感にも奥行きのあるストライプを表現している。
また、肌を優しく包むシアリングで着心地も雲上級。贅を尽くすとはまさにこのこと。フル稼働させられる数カ月後が待ち遠しい。
 
清水将之（mili）＝写真　菊池陽之介＝スタイリング　AMANO＝ヘアメイク　InterFM897＝撮影協力