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2019.06.16

ファッション

革靴をジャブジャブ丸洗い!? 靴育て研究家に聞いた効果とポイント


連載「愛する靴の愛し方」
お気に入りを履き潰しては買い替えて……なんてもったいない! 愛する一足を守る術をフットウェア・ラバーたちに教えてもらった。


明石さん

ウワサでは聞いたことのある、革靴の丸洗い。「うまくできたよ」なんて声を聞くけど、なかには「失敗してシミができた」という悲痛な声も……。

はたして、失敗しない革靴の丸洗いを実践するには、どんな知識とテクニックが必要なのだろうか? 靴磨きを始めて13年、革靴を知りつくした靴育て研究家の明石 優さんに、丸洗いに関する具体的な方法と、その効果を教えてもらった。

 

まずは丸洗いできる靴、できない靴を見分ける


そもそも革靴は水が苦手。すべての革靴が丸洗いをできるわけではないはずだ。なにを基準に判断すればいいのだろうか?

明石さんと革靴

「一般的なビジネスシューズなどに使われている、馬、豚、牛の革ならば、基本的に丸洗いOKです。ただし、履いたときに靴下に色が付く革靴って、ありますよね。それは水性染料を使っている可能性が高く、丸洗いすると染料が抜けたり、シミになりやすいので避けたほうがいいです」。

ほかにも、エナメルやエキゾチックレザーといわれるクロコダイルやパイソン、オーストリッチなどの特殊素材は、革が繊細なため丸洗いには適していないとのこと。

 

丸洗いは諸刃の刃。解決できるトラブルを把握するべし


丸洗いで解決できるトラブルは、主にカビ、シミ、クレーターの3つ。

「水で起きた革靴のトラブルは、水で解消することができます。ただし、丸洗いはあくまで諸刃の刃。必要となる事態が起こる前に、防護のための定期的なケアを心がけてくださいね」。

それではいざ、丸洗いを実践!
準備する道具<用意する道具>
・水
・豚毛のブラシ
・馬毛のブラシ
・綿の布
・タオル
・靴用の汚れ落とし
・サドルソープ
・新聞紙
・クリーム


ブラッシング まずはブラッシング。


汚れ落とし 続いて、汚れ落としで大きな汚れを落としていく。


まずは下準備から。丸洗いをする前に、ブラッシングと靴用の汚れ落としを使って、革靴全体をある程度キレイな状態にしておくこと。それでも落ちない汚れは、丸洗いで解決しよう。

 

濡れムラ厳禁。隅々までしっかり濡らす


靴を濡らす

「桶に水を張り、革靴を水の中に浸けます。失敗しないためのポイントは2つ。1つ目は『常温の水を使う』こと。お湯の場合、油分が抜けて革が荒れてしまいます。2つ目は『均一に濡らす』こと。濡れムラはシミの原因になります。シューレースを外して靴全体に水が行き渡るように、念入りに濡らしましょう」。

濡れムラ このようなムラができないように注意。


ブラシでこする

なかなか濡れムラが無くならないときはブラシでこすり、水を革に浸透させるのが正解。革が傷つくかもと恐れず、水を押し込むようにゴシゴシと!

濡れムラ対策

濡れムラ対策として、ヘラなどでアッパーに含んだ水を絞って移動させる方法も。靴の素材や濡れムラの大きさなどによって、適宜使い分けよう。

 

サドルソープの泡で、優しく汚れを除去


サドルソープ

「全体的に水が浸透したら、革用の洗浄洗剤であるサドルソープを泡立てて、付属のスポンジで汚れを落としていきます。ここでは革が傷つかないよう、こすらずに泡で汚れを落とすイメージで洗っていきます」。

泡を洗い流す

泡を洗い流すときは、保革成分である油脂が少し表面に残り、ヌメッとするくらいが目安。これで洗浄は終わり。次は最も重要な乾燥の工程へ……!

 

形を整えたら、約3日間は乾燥させる


水分をとる まずはタオルで大まかな水分をとってあげる。


新聞紙を詰める 乾燥前には新聞紙を丸めて詰めること。


「洗い終えた靴の内側と外側の水分は、タオルで拭き取ります。そして、つまさきとかかとに新聞紙を丸めて詰め、形を整えましょう。ここで注意したいのは、シュータンを広げて干さないこと。乾燥すると広がった状態で革が固まってしまうので、自然な形に整えてあげることが大切です」。

乾燥させる

「乾燥させる場所は、風通しのいい日陰がベスト。壁に立てかけたり、すのこの上に置くなどして、アウトソールにもしっかりと風が当たるように置いて乾かしましょう。乾燥するまでの日数は、表面1日、内側2日の、約3日間が目安。湿気の多い梅雨時期は新聞紙にカビが生える場合があるので、1日置きに新聞紙を入れ替えることも、重要なポイントです!」。

 

乾燥したら、保湿をしてフィニッシュ!


クリームの塗り込み クリームをアッパー全体に指で塗り込む。


ブラッシング 仕上げのブラッシング。


「丸洗いをして乾燥した革靴は、水分も油分も抜けてカラカラに乾いた状態。最後にクリームをアッパー全体に塗り、保湿をしてあげてください。ポイントは指で塗ること。体温と摩擦でクリームをなじませると、革の奥まで浸透してくれるんです。そして豚毛でブラッシングをしたら、完了です!」。

キレイな革靴はやっぱり気分もあがる! よく晴れた週末に、トライしてみてはいかがだろうか?

 


[お話を聞いた人]
明石 優
茨城県出身。靴育て研究家、絵描き。2006年靴磨きを始める。シューズラウンジ「brift H」(ブリフトアッシュ)の立ち上げに参加。百貨店、一流アパレルブランドのイベントなど靴磨きパフォーマンスを経験。2011年独立。シューシャインイベントに出演など、さまざまな場所で日本には数少ない靴磨きの講師としても活躍。アーティストとしても活躍中。 Instagram:www.instagram.com/akc_yu/


平安名 栄一=撮影 長浜優奈(EditReal)=取材・文

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