ラグジュアリーブランドのアイコンは特別だ。長い歴史に裏打ちされた誇りや矜持が覗き、普遍的な愉悦をもたらす唯一無二の存在。そこに隠されたストーリーを紐解く。
メタルプレートと同じくらい重要な素材の話
三角形のメタルプレート。それももちろん、プラダの重要なアイコンであるが、それと同じくらい大きな役割を果たしているのは「ブラックナイロン」ではないか。
なぜなら、プラダのブラックナイロンはラグジュアリーの常識を覆したマテリアルだから。プラダの本質が宿るこの素材について考えていこう。
’90年代リバイバルの今、無視できない存在
バック・トゥ・’90sが叫ばれる昨今。ストリート回帰や古着のリバイバルなどキーワードはいくつか挙がるが、当時を象徴するアイテムとして無視できないのが、ブラックナイロンを使ったプラダのバックパックである。
まるでシルクのような滑らかさと美しさを備えているとはいえ、スポーツやアウトドアのための素材=ナイロンをラグジュアリーブランドが用いることは当時、決してスタンダードではなかった。しかし、あえて使ったところにプラダの先見性を見る。
素材が持つ光沢やソリッドな雰囲気。それによって際立つプロダクトの魅力。その効能と業界に与えたインパクトがどれほど凄かったのかは、当時、街中に広がった愛用者と、同時に生んだフォロワーの数に比例する。少し皮肉な話でもあるが、プラダが唯一無二の存在になると同時に、そのクリエイションは“みんなのもの”になったのだ。
ただ、この“アイコン”は単に消費されることはなく、さまざまなプロダクトのアクセントとして今もなお機能する。今季の新作ポロでは胸と脇に取り入れることで、ストイックなオールブラックの一枚をモダンに仕上げているのだ。
2019年、さらに広がるプラダのナイロン・ワールド
「プラダのナイロンで何か作ってください」。そんな呼びかけにより、プラダのナイロンに新たな世界を創り出すプロジェクト「Prada Invites(プラダ インヴァイツ)」が昨年スタート。
声が掛かったのは、妹島和世、エリザベス・ディラー、チニ・ボエリという3名の女性建築家で、それぞれが自由に創ったプロダクトは、単に“ファッション”というカテゴリで括ることなんて不可能なほど魅力的なものに仕上がっている。
カジュアルな素材であったナイロンを使って、ラグジュアリーに新たな価値を示したプラダ。その功績を考えたら、三角のメタルプレートと同じくらい、ブラックナイロンが重要な存在だと思えるのだ。
[問い合わせ]プラダ クライアントサービス 0120-45-1913高橋絵里奈=写真 松平浩市=スタイリング 菊地 亮=文