ラグジュアリーブランドのアイコンは特別だ。長い歴史に裏打ちされた誇りや矜持が覗き、普遍的な愉悦をもたらす唯一無二の存在。そこに隠されたストーリーを紐解く。第1回はGUCCI(グッチ)。
2015年、鬼才アレッサンドロ・ミケーレがクリエイティブ・ディレクターに就任したグッチは、確信めいた革新の連続によって見事に生まれ変わり、トレンドの趨勢も180度変えてしまった。その進化は今もとどまることを知らない。
そんなクリエイションが成立するのは「今」につながるグッチの伝統や歴史があってこそ。ここ最近のコレクションに「GGパターン」が頻繁に顔を出しているのも、その証左といえるかもしれない。
創設者のイニシャルが語りかけるブランドの誇り
天地を逆にした2つの「G」。当初はデザインというよりも、アイテムの品質を担保する“マーク”の意味合いが強かった。
時は、第一次世界大戦の傷跡がそこかしこに残る1921年。グッチは、レザーグッズを取り扱うアトリエ兼ファクトリーとしてフィレンツェで誕生する。しかし2度めの世界大戦が始まるや、あらゆるものが軍の統制下に置かれ、自由に資材を手にすることができなくなる。
そこで、創設者のグッチオ・グッチはレザーグッズに代わる素材としてキャンバス生地を選択し、ダイヤモンドパターンを施したグッチ初のシグネチャーパターン「ディアマンテ」を製作。
その後、創設者のイニシャル「GG」をディアマンテ パターンに加え、先の「GGパターン」が誕生したのである。
かくして生まれたグッチの象徴的パターンは、その後、世界中から深い愛を受けるアイコンとして成長していくことになる。
ウォレットの中にある、もうひとつの大事な印
そして、上で紹介したウォレットである。「GGパターン」誕生から約半世紀、格式あるアイコンに分厚いエンブロイダリーのニューヨーク・ヤンキースロゴを落とし込んだ大胆デザイン。
これは、今のグッチを率いるアレッサンドロ・ミケーレが愛用するキャップがきっかけでスタートした、ブランド初となるメジャーリーグ・ベースボール(以後、MLB)とのオフィシャルコラボ。
内側には、このコラボの証であるMLBのタグもしっかり縫い付けられている。誰もがよく知る2つのアイコンが組み合わさることで、よりスペシャルな逸品に生まれ変わっている。好評ゆえに2シーズン続いたという事実もまた、アイコンの力をよく示している。
スニーカーのソールに宿したブランドの歴史
グッチの定番スニーカー「エース」のメタリックシルバーの上で踊るのは、紛れもなくあの「GGパターン」。コミックから着想を得たアレンジは、どこかコミカルでより親近感が湧く。
そして、アウトソールに刻まれたラゲージを持つナイト(騎士)の姿。頭の両サイドには、洗練と企業家のパワーのシンボルとして、一輪のバラと船の舵がデザインされている。
「グッチ クレスト」と名付けられたこちらは、1950年代初期に誕生した、ブランドの歴史を辿る原点回帰的なデザイン。そんなアイコンも盛り込んだスニーカーを、特別と言わずして何と言おう。
ここで紹介したアイテムからわかるように、グッチのアイコンは常に進化している。だから魅力を失わないのだ。みんなの好きな「GGパターン」に隠されたストーリーが、その価値をさらに高めてくれる。
グッチ ジャパン カスタマーサービス
0120-88-1921高橋絵里奈=写真 菊地 亮=文