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2018.12.30

ファッション

ジェイソン・デンハムさんに聞いた「デニムの未来は明るいですか?」

「好き」な理由を考えるのは照れくさい。理由なんて必要か? と天邪鬼なことを言いながらも、好きなことの理由を見つめ直すと、自分自身が大切にしたいことの意外な本質や軸が見えてくるもの。
デニムも、僕らがずっと「好き」な存在のひとつじゃないか?
今回考えるのは、僕らはこの先も、大好きなデニムといい関係でいられるかどうかについて。
かつて、本誌連載企画「もっとデニムを語ろう」でも独自の感性とデニム愛を示してくれた気鋭デニムブランド、デンハムを率いるジェイソン・デンハムさんに、「これからのデニム」をテーマに6つの質問を投げかけた。
教えてジェイソン!「デニムの未来は明るいですか?」
ジェイソン・デンハムさん
デビューわずか10年で、自身のブランド「デンハム」をトップブランドの仲間入りさせたデニム界の重鎮。ヴィンテージデニムを愛しながら、そこに常に新しい価値を提案し続けるデニムラバー。

 
 
すると、“間違いないデニム選び”という僕らの果てしない未来の行く末を占う、ハっとするような答えが返ってきたのだ。
 
Q1:この100年で ワークウェアからカジュアルウェアに変化してきたデニム、未来はどうなってる?
A:

「世界の変化と同じように僕らのライフスタイルも大きく変わったよね。ワークウェアが出自のデニムはこれから、もっとスポーツやパフォーマンスとつながっていくと思うよ」。
■デンハムで使用しているカンディアーニ社製のストレッチデニムは、正統派のリジッドデニムの見た目を備えつつ、ハリ感にすぐれた快適なはき心地を実現。デニムが生まれた150年前には及びもつかなかった新たな技術である。同じように、今は想像だにできないデニムにおける新技術が、次の150年で生まれているのかもしれない。
 
Q2:100歳の誕生日、どんなデニムで迎えたい?
A:

「生きられたらいいけど(笑)。100歳の誕生日……お気に入りの日本製デニムをはいていたいかな」。
■ジェイソンさんの100歳の誕生日。そこで彼が身に着けたいのが日本製デニムとはうれしい限り。これってつまり、日本製デニムの未来も保証してくれったこと?
 
Q3:デニムがこれから変わるべき点と、そうでない点って何かな?
A:

「デニムの見た目や精神は普遍的であるべき。ただ、これからは快適さや性能がもっと必要になるんじゃないかな」。
■かつてジェイソンさんが「遺産であり、未来である」とも語っていたデニム。普遍的なのは主にインディゴで染められた綾織りの生地で作られる5ポケットデザインという点。弱点とも言われてきた素材感も克服してきた歴史を鑑みれば、ジェイソンさんの語る「快適さや性能」において、僕たちがデニムを好きな理由が将来は今以上に増えている可能性は十分にある。
 
Q4:“未来のデニム”にメッセージを送るなら?
A:

「“THE TRUTH IS IN THE DETAILS(真実は細部に宿る)”」。
■日本でも言われる「神は細部に宿る」。ディテールの作り込みにおいて世界中から評価の高いブランドを率いるジェイソンさんの重みのあるメッセージだ。立体裁断のダーツ、ハサミ型のステッチが入るピスポケットやリベットのカラーリングなど、デンハムこだわりのディテールは、その言葉を裏付ける。絶えず新しい価値観を産み続けるデンハムは、この先も僕らのデニム選びを楽しませてくれるはずだ。
 
Q5:「今はまだ作れていない“究極のデニム”」ってどんなの?
A: 
「これから作っていくよ、乞うご期待!」
■毎シーズン新たなアイデアを投入し続けるデンハムには愚問だったようで……。ワークウェアとしての究極の機能を追求して生まれ、カジュアルウェアとしてもある意味究極にメジャーな存在となったデニム。しかし、ファッションが移ろうように「究極のデニム」という価値観も時代に応じて移ろうもの。チャップリンが常に「最高傑作は次回作」と言ってたみたいに、デンハムの“次回作”にも注目し続けたい。
 
Q6:100年後のデンハムはどんな存在になってるかな?
A:


「150年変わらず存在している“5ポケットのデザイン”は、時間がその価値を証明した象徴。僕がデニムを大好きな理由だ。そんなデニムに、アツい情熱を持って向き合っていることは間違いないね」。
■デニムが誕生して150年。その普遍的な部分こそが本質的な価値と言い切るジェイソンさん。その言葉は、10代から数十年の時間が過ぎた今でも僕らがデニムを好きな理由を、改めて教えてくれているようだ。
100年後のデニムを予知することなんてできない。けれど、わかるのは100年後もきっと、僕らの子供や孫たちは変わらずデニムが好きで、ジェイソンさんをはじめとするデニム作りに身を捧げる人たちが抱くモノづくりへの情熱も、変わらないだろうということ。
だから、ワクワクするようなデニムが生まれる未来があるのは確か。けれどその一方で、選択肢もまた増え続けるとも言えるわけで、僕らの迷えるデニム選びの旅路もまた、終わりはないようだ。

髙村将司=文


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