デザイナーに自社デニムの最新作について熱く語ってもらう、うちの子自慢。それぞれのブランドが掲げるデニム哲学は必見。
前編に続き、後編をお届け!
20年越しの想いを乗せた渾身のブッシュパンツ
ウエストオーバーオールズ
デザイナー 大貫達正さん
昨年のデビューとともに女性の間で話題となり、その人気はすぐにメンズへ飛び火。瞬く間に実力派ブランドの仲間入りを果たした。ヴィンテージへの造詣が深い大貫さんが心血を注いで手掛けたのが、このブッシュパンツだ。
「18歳の頃、バイト先の店長のブッシュパンツにひと目惚れして。当時は彼のマネばかりしていたくらい。ずっと構想していたのですが、今年ついに完成しました」。自分好みの明るいブルーに、復刻したタロン社製ジップ……、20年越しの想いがあるだけにディテールへのこだわりも抜かりがない。「目標はリーバイス『501』に代わる永久定番を作ることです」と、情熱を持ってデニムを作る。
時を経て実感するデニム賢者の哲学
オーベルジュ
デザイナー 小林 学さん
「デニムには、はく人の行動、もっと言えば人生が“アタリ”となって表れる」というデニム哲学を持つ小林さんは、フランスや岡山県のデニムメーカーや工場で培ったデニム作りの経験を活かし、スロウガンを創業。そして今年の春夏には新ブランド、オーベルジュを立ち上げた。
このスリムストレートは、横糸をシルクで織ることで生地は奥深い光沢を放ち、はき心地も滑らかで気持ちいい。またノリを抜いて天日乾燥させたような特殊なウォッシュ加工を施した。「自分の分身になりえる服はそうそうない」とデニムの魅力を語る小林さんはまた、「格好良くデニムをはく皆さまのお手伝いがしたいから」とデニムを作り続ける理由を話してくれた。
作り手の好みが反映された“等身大デニム”
イエスタデイズ トゥモロウ
デザイナー 管野寿哉さん
’90年代初頭の古着ブーム。管野さんもまた、そこにハマった世代だ。「デニムは服を語るうえで欠かせないアイテムですし、ファッションに興味を持つきっかけとなったのもヴィンテージデニムです。だからブランド設立当初からデニムを作り続けていますし、毎シーズン気分でシルエットや加工に変化をつけて自分のはきたい1本を作っています」。
今季の新作は膝にダメージ加工を施したスリムストレート。裾をほつれさせ、少し野暮ったさを狙ったのがポイントだ。そして、アタリがきれいに入った絶妙な色落ち具合は、管野さんが普段からはいている古着をサンプリングしたもの。37.5歳、同世代の作り手の“リアル”が反映されたデニムに共感するところは多そうだ。
“いいデニム”を作ることがブランドとしてのプライド
デラックス
ディレクター HUEさん
ニューヨークと東京のファッションを融合させ、独自のスタイルを確立するデラックス。ディレクターを務めるHUEさん曰く、「“いいメンズブランド”の条件のひとつは、デニムアイテムのクオリティの高さ」。ブランド立ち上げのときからデニムを作り続けてきた男の言葉は、当然、自らにも向けられている。
「最新作のリジッドデニムはワタリ部分から裾にかけて強めのテーパードがかかっていて、すっきりとした見た目で美脚効果も期待できます。それでいながら、ヒップ回りは十分なゆとりがあり、伸縮性もあるので窮屈さはありません」。
独特なステッチワークや細めのベルトループに繊細さと個性が光り、シンプルながらも細部への確かなこだわりが感じられる。自身の言葉どおり、“いいメンズブランド”のプライドが滲んでいる。
既成概念にとらわれないデニムの再構築
オールド パーク
デザイナー 中村仁紀さん
古着店で修業を積み、2012年より、リメイクを軸とするブランド、オールド パークをスタート。そんな中村さんにとってデニムとは、「自分自身が最もはいているパンツということもあり、リメイクする材料としていちばん身近であり最適な存在」だという。
こちらは、古着のストレートデニムをベースに、パイピングテープを挟んで再構築することでウエスタン感を演出。その際、内側を詰めてシルエットを細くすることで、はいたときの見え方が美しく、コーディネイトもしやすくなっている。シルエットを変えたときに生じるズレで裾に段差ができ、それをそのまま活かしたデザインに作り手の遊び心が垣間見えるも、「難しく考えず、501をはく感覚で楽しんでほしい」との言葉に、デニムの持つ普遍的な魅力を再確認させられる。
完成度の高さに満足しつつもスポーティなアレンジを楽しんだ
キャプテン サンシャイン
デザイナー 児島晋輔さん
’60年代のクラシックサーフカルチャーに傾倒する児島さんが、ブランド初期から作り続けるデニムがある。「まさしく’60年代に生まれたリーバイスの551ZXXにヒントを得た、わずかにテーパードしたワイドシルエット。13.5オンスのベーシックなデニムですが、生地は起毛感を出したオリジナルのものです」。
好きなものを徹底的にこだわってカタチにしただけあり、「定番と謳える完成度に自分のなかで達している」という。今季はそれをベースに色落ちのコントラストで側章をデザインし、トレンドを射抜いた。そのスポーティな見た目はスニーカーはもちろん、児島さんとしては「くるぶし丈に設定し、ローファーで合わせてギャップを楽しむのもいい」と教えてくれた。
鈴木泰之=写真 星 光彦=スタイリング 菊地 亮=文