エリック・クラプトンも訪問したハローテキサスの “お洒落じゃない”Tシャツ
Tシャツ選びで持つべき7の視点
夏の必須アイテム、Tシャツ。当たり前に着てるけど、それを心から楽しめているかと聞かれて、自信を持って「YES!」と言える人って少ないのでは?
シンプルなだけに奥深いTシャツをもっともっと楽しむための7の視点を紐解こう。
最終回は「お洒落じゃないTシャツ」。
「ハローテキサス」は世界でも類を見ないラインナップのヴィンテージTシャツ専門店。老舗ホテルの土産品や愛犬家が作ったオリジナル、はたまたツアー会社が旅行参加者だけに配ったものなど……そのセレクションは、およそファッションとは程遠く感じるものばかり。
なのに、ここには世界的なデザイナーやクリエイターが遠路はるばる足を運ぶ。なかにはエリック・クラプトンも来日中にお忍び訪問。そんな不思議な魅力のある“非ファッション系Tシャツ”っていったいなんなの?
オーナー兼キュレーターの三好智之さんに聞いた。


エリック・クラプトンが、Tシャツとこの空間を「アートだ」と言ったワケ
音楽情報誌の編集者だった三好さんが会社を辞め、この特殊なセレクションのTシャツ専門店を始めたのは2008年。
「もともと古着が好きで、学生の頃からヴィンテージデニムを探しにアメリカを放浪していたんです。そのうち日本のバイヤーたちがまったく相手にしないTシャツに、見た瞬間に引き込まれる魅力的なデザインやグラフィックがたくさんあることに気付いて。これはいったいなんだ! と思ってコレクションを始めたんです」。
三好さんを虜にしたのは、お洒落とは無縁のTシャツだった。スーベニアや記念品、小さな会社やショップのオリジナル……。
トレンドやファッションの外側にあるそれらのTシャツは、色使いやフォント、プリントそのものが斬新で、アート性や独創性を感じたという。しかもTシャツに纏わるストーリーにも魅了された。
「そんなTシャツだけを集めたショップがあってもいいんじゃないかと思ったんです、無知と勘違いが災いして(笑)。Tシャツは、どこでどんな目的で作られたかを徹底的に調べて、昔のレコードに付いていた解説文のようなものを付けて売ることにしたんです」。

本当に魅力を感じた一点モノだけを直接買い付けて、解説付きで売る。こんな非効率なショップは今時ないだろう。
そんな三好さんの情熱とは裏腹に、オープン当時、Tシャツはまったく売れなかった。ところが、オープンして3カ月が経ったある日、世界的ミュージシャンが来店する。
「エリック・クラプトンが、このお店の存在をネットで見つけて突然現れたんです」。
来日公演の最中に、リハーサルの合間を縫って訪れた御大は、「この空間自体がアートだし、こういうTシャツを発信するあなたの行為がアートだよ」という言葉を残し、お店にあったギターを爪弾いて去っていったという。
「そんな出来事があってから、徐々に噂を聞きつけた人が来るようになりました。いつの間にか世界的なデザイナーやスタイリストも足を運んでくれるようになって。自分の選ぶものに共感する人が少しずつ増えていったんですよ」。
そんなラインナップの中に並ぶハローテキサス唯一のオリジナルTシャツ。ボディは「フルーツ・オブ・ザ・ルーム」のものを採用。三好さん曰く「アメリカ人が見たら間違いなくテキサスのスーベニアTシャツだと思うはずw」。6900円
「ハローテキサス」でTシャツを買うことは、アートを買うことに近いのかもしれない。それは、オーシャンズ世代がかつて足繁く通った、こだわりの強いレコード店や偏ったセレクトの古着屋さんで買い物をすることにも似ている。
「僕とお客さんは、ある種、共犯だと思っています。自分のセレクトに共感してくれた人が、それを着て世の中にその魅力を発信するわけですから」。


世の中の流れ云々に関係なく、セレクトした人の眼だけを頼りに「俺もこれ、イケてると思う!」と共感して買ったTシャツは、自分にとってかけがえのない相棒になるに違いない。
あらゆる情報に溢れ、トレンドが目まぐるしく変わる今だから、あえてこんな骨太でアナログなTシャツ選び、してみてもいいと思いません?
[話を聞いた人]
三好智之さん(43歳)
アメリカを放浪中に出会ったTシャツに魅せられて、’90年代中頃から収集を始める。2008年に当時勤務していた出版社を退社し、Tシャツ専門のヴィンテージショップ「ハローテキサス」 を開店。
[ショップ情報]
ハローテキサス
住所:東京都渋谷区神宮前2-18-4 石黒荘 103
電話番号:03-6804-1147
営業:14:00〜19:00(日曜定休)
www.hello-texas.jp/
長谷川茂雄=編集・文