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「モンクレール」を登山グッズからメゾンに変えた、ある男の物語

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モンクレールの出自は確かに登山グッズのメーカーである。しかし、あるひとりのイタリア人によって指折りのメゾンへと生まれ変わった。その人物こそ、2003年よりモンクレールを率いてきたレモ・ルッフィーニ氏だ。

僕らの世代が「モンクレール」の名を聞いて思い浮かべるのは、上質なダウンウェアブランド、というイメージだ。しかしながら近年はダウンという枠にとらわれず、毎シーズン創造性豊かなコレクションを発表し続ける、メゾンとしての認知度が高まっているように思う。

モンクレールというブランドの核はどこにあるのか。会長兼CEOのレモ・ルッフィーニ氏に、ブランドの来歴と変遷について聞いた。

モンクレールとは?
1952年、フランス南東部のグルノーブル郊外の村、「モネスティエ・ドゥ・クレルモン」にて設立。創業者のレネ・ラミヨンは登山グッズ製造に携わっていた人物で、当初はキルティングの寝袋やテントなどを製作していた。代表的なアイテムはダウンジャケット。軽く保温性の高い、フランス産を中心とした最高品質の水鳥の羽毛を使用する。現在は世界の主要都市で200店舗以上を展開するブランドに成長した。

「ブランド作りとは価値を理解してもらうことだ」

会長/CEO レモ・ルッフィーニ氏。イタリア・コモ生まれ。米国ボストン大学でファッションマーケティングを専攻。1984年にイタリアに帰国し、メンズシャツを専門に扱う「ニューイングランド」を設立。その後ヘンリーコットンズなどのクリエイティブディレクターを経て、2003年にモンクレールの経営権を取得し現職に就任。製品開発から広告戦略まであらゆる分野に携わっている。冬はスキー、夏はセーリングに熱中するスポーツマンでもある。

「私たちの歴史のなかで最初にダウンジャケットが登場するのは、創業から2年後の1954年。工場で働く社員を寒さから守るために考案されました。当時は作業着の上からダウンジャケットを羽織っていたそうです」。

そのダウンジャケットが、当時のフランスを代表する登山家、リオネル・テレイ(※1)の目に留まる。彼のシグネチャーラインとしてダウンジャケット、グローブ、寝袋などを開発し、実地テストを繰り返しその品質を高めていった。

「’54年、世界第2位の高峰K2に挑んだイタリア隊にダウンジャケットが採用され、初登頂の栄誉をともにしました。さらに翌’55年、モンクレールを纏ったフランス隊がヒマラヤ屈指の難峰、マカルーの初登頂を成し遂げています」。

ダウンジャケットを開発したその年と翌年に8000m峰2座を制する──創業当時の製品のクオリティの高さと、技術革新に対する意欲的な姿勢を証明するエピソードだと思う。

その後’68年に創業地である仏・グルノーブルで冬季オリンピックが開催。フランスのアルペンスキーチームの公式サプライヤーに認定され、国内での知名度を高めていく。’80年代から’90年代はファーのトリミングを施したり、リバーシブルのモデルを開発したりと、革新的なアイデアが製品に反映された。登山用に始まり、スキーウェアを経て、街着のダウンへ。そしてヨーロッパでの認知を獲得したモンクレールが世界進出を目指す転機となったのは、2003年のこと。このイタリア人企業家、ルッフィーニ氏の登場である。

「モンクレールを買収したときに考えたのは“ブランドのルーツとは何か”です。核となる技術力と革新に対する意欲があったからこそ、アパレルはもとよりアクセサリー、シューズ、アイウェアまで多彩なコレクションを今日に展開できたのです」。

’06年、ウィメンズコレクション「モンクレール ガム・ルージュ」を発表し、ブランド新時代の幕が上がる。’09年にはトム・ブラウンが手掛ける「モンクレール ガム・ブルー」を、’10年には最新素材を使用したハイパフォーマンスライン「モンクレール グルノーブル」をスタート。

さらに今年2月のミラノコレクションでは、さまざまなクリエイターと組んで8つコレクションを同時に発表するという新たなプロジェクト「モンクレール
ジーニアス」を始動させ話題に。ルッフィーニ氏はこの先、どんな未来を描いているのだろうか。

「モンクレールといえばダウンジャケットと、世界中のカスタマーが認識するところまできたと自負しています。これから重要なのはブランドの背景や哲学を伝えていくこと。人々にモンクレールの価値を理解してもらうための活動を続けることが、“ブランドを作る”ことなのだと考えています」。

リオネル・テレイ(※1)
登山史における“ヒマラヤ黄金期”、1950年代に活躍したフランスを代表する登山家。アイガー北壁第2登、世界第5位の高峰マカルー(8463m)初登頂など、輝かしい記録を保持する。

加瀬友重=文

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