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2018.02.10

ファッション

エルヴィス・プレスリーも愛した「ハミルトン」のモノ作りとメッセージ

ハミルトンはアメリカを代表するウォッチブランドのひとつである。2017年に誕生60周年を迎えたブランドを代表するモデル「ベンチュラ」と、 新たに登場したパイロットウォッチ「カーキ エアレース」。 そのどちらにも息づく、常に挑戦し革新を続けるモノ作りの理念をハミルトン インターナショナル CEO シルバン・ドラ氏が語ってくれた。
ハミルトンとは?
1892年、米ペンシルベニア州ランカスターで創業。創業当時の懐中時計がアメリカの公式鉄道時計として採用される。第二次世界大戦時には100万本以上の軍用時計を米軍に納入。以降、世界初の電池式時計「ベンチュラ」や、同じく世界初のLED式デジタル時計「パルサー」といった革新的な腕時計を開発。現在はスイスに本社を置く。ミリタリー、パイロット、マリンウォッチを擁する「カーキ」も人気のシリーズだ。
 

「アメリカらしさとはすなわち“開拓者精神”です」

ハミルトン インターナショナル CEO シルバン・ドラ氏。1972年生まれ。通信機器業界、スウォッチを経て、2005年から’10年までハミルトン インターナショナルのセールス・バイスプレジデントを務める。’11年1月より現職。プライベートは奥さまと18歳の息子、愛犬、愛馬の“5人家族”。趣味はワインで、いわく「どこか時計と似ているところがあるんです」。穏やかな語り口でときにユーモアを交えてインタビューに答えてくれた、オーシャンズ世代のジェントルマンである。
2017年6月に千葉で開催された「レッドブル・エアレース(※1)・ワールドチャンピオンシップ 2017」。日本人パイロットの室屋義秀さんが同地での連覇を達成し話題となった。ハミルトンは今年からレースの公式タイムキーパーを務めている。エアレースに懸ける思い、歴史、時計作りについてCEOのシルバン・ドラ氏に伺った。
「アクロバティックな飛行と緻密なレースの組み立て。ギリギリのところで勝負を続けるパイロットたちは、勇敢かつクレバーなプロフェッショナルだと思います。情熱と冷静さが共存しているのです。その点がハミルトンの時計作りとシンクロすると感じて、パートナーシップを結びました」。
歴史的にもハミルトンの腕時計は“空”と浅からぬ関係がある。1930年代にはトランスワールド、イースタン、ユナイテッド、ノースウエストといった航空会社の公式ウォッチに採用されている。このブランドの奥深さを探るべく、歴史を紐解いていこう。
「ブランドを語るうえで欠かせないのがアンドリュー・ハミルトン(※2)という人物。創業以前に亡くなっているスコットランド出身の法律家ですが、彼が遺したランカスターの土地に工場を建設したことでブランド名の由来に。18世紀のアメリカで、言論の自由のために精力的な政治活動を行っていた地元の名士。そんな進取の精神が、ブランドのDNAとして受け継がれています」。
その精神を礎として、革新的な腕時計を数多く生み出してきた。
「イノベイティブな時計の代表が、1957年に登場した“ベンチュラ”です。当時、私たちは世界初となる電池式のメカニズムを発明。それに相応しいケースを作るべく、ミッドセンチュリーを代表するリチャード・アービブ(※3)をデザイナーに起用。丸でも四角でもない新たな形を創造しました」。
この時計はエルヴィス・プレスリーをはじめとする多くの著名人を魅了。そして全世界的に愛されるブランドのアイコンウォッチとなり、2017年で誕生60周年を迎えている。現在はほかにも数多くのコレクションを擁するハミルトンであるが、はたしてどんな人に向けて腕時計を作っているのだろうか。
「ハミルトンのマーケットを引っ張っているのは、実は日本とイタリアです。感度の高い両国のユーザーの要望に応えれば、世界的にも支持が得られます。強く主張したいというよりは、さりげなくセンスを醸したい人。そんな人のライフスタイルの一部として、ハミルトンが選ばれたらうれしいですね」。
モノ作りにおいて大事にしているのは「若い世代の意見を積極的に取り入れて形にすること」だという。歴史とともにドラ氏が引き継いだ自由な社風、情熱、クレバーな分析力。これがハミルトンというブランドの武器なのだ。
「ハミルトンの時計が醸し出すアメリカらしさとは、いわば“開拓者精神”なんだと思います」。
 
レッドブル・エアレース(※1)
エナジードリンク「レッドブル」がスポンサードするエアレース。最高時速370㎞、最大重力10Gというなかで、世界最高レベルの操縦技術を持つパイロットがアクロバティックなレースを披露する。
アンドリュー・ハミルトン(※2 )
1676〜1741年。スコットランド人の法律家。彼が遺した「自由のない人生なんて、みじめなものだ」という言葉は、「スピリット・オブ・リバティ」シリーズのレザーベルトにも刻まれている。
リチャード・アービブ(※3)
1917〜’95年。アメリカの工業デザイナー。’50年代のキャデラックなど「アメリカンクラシック」と呼ばれるクルマのデザインを手掛けた。ミッドセンチュリーらしい流線形デザインが特徴。
髙村将司=文


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