2018.02.01
FASHION

「ゼロハリバートン」がMADE IN USAにこだわる最大の理由とは?

耐久性に優れたアルミ合金製のスーツケースで知られるゼロハリバートンは2017年4月、すべての製品をアメリカ生産に戻したという。新しく2017年よりCEOに就任したトム・ネルソン氏がその真意を語る。

 

ゼロハリバートンとは?
1938年に米カリフォルニアで設立されたハリバートンケース社が起源。’52年にゼロコーポレーションの傘下に入り現在のブランド名に。ちなみにゼロコーポレーションはもともとジラルドメタルコーポレーションという社名だったが、「ジラルド」の発音が難しかったため、社名をゼロハリバートンに変更したという。アルミ合金製のアタッシェケースがブランドを代表するアイテム。高い機能性とスマートなデザインで人気を博している。

 

「原点を追求する。それが自国生産の唯一の理由です」

CEOトム・ネルソン 氏 1959年生まれ。アメリカ・ウェストバージニア州出身。’81年にワシントン大学を卒業後、世界最大の会計事務所「デロイト トーマツ コンサルティング」に入社する。’88年からはルイ・ヴィトン、アメリカの大手食品・飲料メーカーのペプシコ、コーチで要職を歴任し、2010年にトゥミ ジャパンの代表取締役社長に就任する。’17年1月より現職。趣味はハイキングとジムでのトレーニング。妻と娘2人の4人家族。

「月から石を持ち帰ったスーツケース」として知られるゼロハリバートン。このアメリカの名門ラゲッジブランドが、2017から自国生産に回帰した。米ラゲッジメーカーの多くが第三国を生産拠点としているなか、大きな決断と言っていいだろう。1938年から続くブランドの歩みと自国生産の意図について、CEOのトム・ネルソン氏が話してくれた。

「創業者はアール・P・ハリバートン。石油事業に携わる実業家だった彼は、たくさんの書類や資料を持ってアメリカ中を移動していました。しかし、当時のアタッシェケースは密閉力が弱く、どうしても中にチリや砂が入ってしまう。そこで彼は、自分でラゲッジを作ろうと思い立ったのです」。

当時最先端の技術を持っていた航空設計のエンジニアに目をつけた。彼らの協力を得てアルミ合金を使用したアタッシェケースを製造、ハリバートンケース社として生産・販売を開始する。

「航空機と同じアルミ合金製のスーツケースは密閉力に優れ、しかも軽量。瞬く間に全米で話題になりました」。

ブランドを象徴するディテール「ダブルリブ」が登場したのは’46年だ。本体表面に施された2本のプレスラインは、耐久性を追求した結果誕生したもの。ハリバートンケース社は’52年、製造を請け負っていたゼロコーポレーションの傘下に入り、ブランド名をゼロハリバートンに改める。そして’69年、冒頭の「月から石を持ち帰った〜」と形容されるきっかけとなった出来事が起きる。アポロ計画のスーツケースに指名されたのだ。

「NASAからアプローチがあったと聞いています。当時、ほかにこれほど頑丈で密閉力に優れたケース(※1)はなかったのでしょう。NASAの依頼で“月面採取標本格納器”を製作しました。とはいっても、市販の製品の内側を少し改造しただけなのですが」。

特別なことをしなくとも宇宙空間で難なく使用できたというわけだ。品質の高さがうかがえるエピソードである。

2008年には突出した軽さと強さを併せ持つポリカーボネート素材を使った新モデルを発表。’38年のアルミ合金製アタッシェケースと同様、ラゲッジの世界に新たな地平を切り拓いた。

そんなグローバルブランドが、今になってアメリカ生産回帰に舵を切った理由はどこにあるのか。

「新しい素材やデザインの開発、企業としての合理性を追求することも確かに大切です。でも、ゼロハリバートンが顧客に愛され続けていくためには、それだけでは足りない。ブランドが誕生した土地で、モノ作りの原点を追求しなければ。それが唯一にして最大の理由です。消費者に潜在する“本物志向”を刺激し、持つ人に喜びを与えられるプロダクトを生み出したい。そんな決意表明でもあるのです」。

これまで一部のアタッシェケースが本国で生産されていたが、今回のプロジェクトによって全製品がアメリカ生産に切り替わる。「MADE IN USA」という言葉からはさまざまなイメージが浮かぶ。堅牢性、合理性、先進性……。どのイメージも、創業者のハリバートン氏が理想としたモノ作りに重なってくる。新生ゼロハリバートンが、本物のアメリカンプロダクトの魅力を我々に教えてくれるだろう。

 

頑丈で密閉力に優れたケース(※1)
1974年、レバノンのベイルート空港でハイジャックが発生。人質の解放後に飛行機が爆破されたが、残骸から発見されたゼロハリバートンのケースは中身の損傷がまったくなかったという。

押条良太(押条事務所)=文

# ゼロハリバートン# ブランド知り
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