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2018.01.25

ファッション

働く男の腕時計に「フレデリック・コンスタント」が最適な理由

「スイスメイド」の高品質でクラシックな腕時計を、低価格で。これがフレデリック・コンスタントの揺るがぬ信念である。創業者であり社長を務めるスタース氏の話を聞いてみて強く感じたのは、「このブランドの製品は、この人物の人柄そのものではないか」ということだ。
 
フレデリック・コンスタントとは?
1988年創業。「手の届くラグジュアリー」をコンセプトに、スイスメイドの腕時計を求めやすい価格で提供する。2004年には自社ムーブメントの製品化に成功し、マニュファクチュールとしての評価も高めた。
ブランドを代表するモデルは、ムーブメントの心臓部であるテンプが文字盤から覗く「ハートビート」。現在では世界100カ国以上、約2700店舗での取り扱いがあるという、グローバルなブランドに成長している。
 

「ビジネスパーソンのための腕時計を追求し続けたい」

フレデリック・コンスタント社長 ピーター・C・スタース氏。1963年、オランダのゴーダ生まれ。エラスムス・ロッテルダム大学で経営学学士修了後、ハーバード大学でビジネスプログラムを学ぶ。’87年、経営コンサルタントとしてキャリアを開始。’89年に家電メーカーに入社し営業部長に就任する。並行して’88年にフレデリック・コンスタントを設立。ビジネスパートナーでもある妻のアレッタ・スタースさんと一男一女の、4人家族。
ムーブメントを自社製造するウォッチメーカーを、時計業界ではマニュファクチュールと呼ぶ。1988年創業のフレデリック・コンスタントは、スイス時計界の新興でありながらマニュファクチュールとなった、“たたき上げ”のブランドといえるだろう。一代でその地位を築いたのが、創業社長のスタース氏である。
「妻とウインドーショッピングをしていた、就職して間もないある日のこと。時計店のショーケースを眺めていて気になったのが価格です。伝統的なスイスウォッチは美しいけれど、とても高価。一方アジア製の時計は安価でしたが、デザインはいま一歩と感じました。さていざ自分で買うとなると、どちらにも食指が動かなかった。適度なバランスのものがない。ならば自分で作ってみようと思い至ったのです」。
一貫して掲げるコンセプト「手の届くラグジュアリー」は、スタース氏の実感に基づくものだったのだ。同社の主要顧客層は30〜40代のビジネスパーソン。’88年当時、まさにビジネスマンであった彼の思いは、時を経て今のユーザーの共感を得たのである。
「開発やマーケティングはもちろんですが、デザインにおいても効率性は重要です。我々のシンプルな腕時計デザインは製作期間の短縮につながり、コスト面でも効率的。おのずと商品供給のスピードもアップし、顧客からの信頼を獲得できるというわけです」。
ブランドを代表するモデルは、文字盤からテンプ(※1)を覗かせた、いわゆるオープンハート仕様の「ハートビート」だ。’94年の発表。2004年に自社製キャリバーを搭載したこの腕時計は、マニュファクチュールとなるべくゼロから時計作りを始めた、ブランドのパイオニア精神の象徴でもある。当然ながら製作の苦労は並大抵ではなかった。
「時計のパーツ作りは一にも二にも精度の高さが求められます。0.001㎜内の誤差までしか許されない世界。それを実現するためにコンピュータ制御のCNC旋盤(※2)を導入しましたが、最初のマシンでは精度を高められず、マシンの入れ替えを余儀なくされました。もちろんキャリバー製作も一筋縄ではいきません。通常、テンプはムーブメントの裏蓋側に設置されます。でもハートビートのデザイン上、文字盤側の12時位置か6時位置に配置する必要があるため、ムーブメントをゼロから設計し直さなければなりませんでした。苦労話には事欠かないのです(笑)」。
幾多の困難を乗り越え発表にこぎつけた本作は、当時一躍話題となり、ブランドの価値を高める原動力となった。そして現在では世界100カ国以上で展開するグローバルブランドに成長。今後の展望はいかなるものか。
「特別な目標は掲げません。今までどおりビジネスパーソンに相応しい、高精度で美しいスイスウォッチを作り続けるのみ。その努力が成長につながることは、今までの道のりで実証済みです。より多くの人に“手の届くラグジュアリー”を堪能してほしいですね」。
揺るぎない信念。スタース氏の真っすぐな眼差しは、ブランドのモノ作りに対する誠実さに通じている。
 
テンプ(※1)
ムーブメント内のパーツのひとつ。規則正しい往復回転運動を行い、一定速度の振動を保つためのもの。このパーツの精度の高さが時間を正しく刻むことに直結する。機械式時計の心臓部といえる。
CNC旋盤(※2)
コンピュータ制御で駆動する、工具の自動交換機能を備えた製作機械。高さ、幅、奥行きの3軸で動くことで立体的に切削する。腕時計のパーツ製作において欠かすことのできない道具だ。
髙村将司=文


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