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「なんで都会にアウトドアの服が必要なんですか?」に5つの名解答

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ここ数年、街でアウトドアブランドの服を着ることがごく自然に受け入れられている。しかも、都市に馴染む洗練されたスタイルとして。

これは、アウトドアやスポーツブランドを日常的に着るアメリカとも少し具合が違うようだ。アウトドアと都市、いわば対極にいる両者がなぜこれほどまでに近づいているのか? そのワケを5人の識者に聞いてみた。


1人目:エフ シーイー デザイナー 山根敏史さん

「僕にとって旅行や日常生活における、機能は圧倒的な“正義”なんです」

山根さんの作るほとんどのバッグの素材には、糸の段階からオリジナルで開発したコーデュラナイロンが使われている。これは小規模のブランドとしてはきわめて異例なことなのだ。

名古屋で育った山根さんを夢中にさせたのは古着。それが、アウトドアに触れるきっかけにもなった。

「当時の名古屋にはファーマーズという古着の名店があって、お金を貯めてはヴィンテージのリーバイスやスウェットシャツを買っていました。やがて、ロックバンド、フガジのヴォーカル、イアン・マッケイの影響で’70年代の物に傾倒。彼が着ていたシエラデザインズのマウンテンパーカのカッコ良さに痺れたんです。アウトドア業界にとって、’70年代はそれまでの常識を覆す新しい技術、素材が誕生した歴史の転換期でした。だから今でも、手入れをすれば長く使える“ギア”的なアイテム、例えば60/40クロスとか、初期のゴアテックスとかが好きなんです」。

ナンガとのコラボダウン。機能がアイコンになっている。

そんな山根さんがライフワークにしていること。それは旅である。

「旅に持っていく物って、バッグにしろ服にしろ、アウトドア並みにハイスペックな機能が求められます。僕みたいにコアなアウトドア派ではない人間が、機能的な服を作り、求める理由は、旅や日常生活において機能は正義と感じているから。ゴアテックスのフード付きのシェルが1枚あれば、旅先で傘は必要ありません。みんなそういう機能を求めているから、これほどアウトドアの服が街にあふれているのではないでしょうか」。


エフ シーイー デザイナー
山根敏史さん(41歳)
日常を快適に過ごすための機能とファッションをつなぐブランド、エフ シーイーのデザイナー。好きな食べ物はハンバーグ。



2人目:ノンネイティブ デザイナー 藤井隆行さん

「今のアウトドアウェアを街で着る流れは、すごく東京っぽいなと思います」

「高くて買えませんでしたね」と語る、憧れの1枚だった’90年代の緑×紫のムーンストーン。

アウトドア物を得意とするファッションデザイナーに話を聞くと、1992年に雑誌「ポパイ」が提唱した“ニュースポーツ”スタイルに影響を受けたと答える人が多い。藤井さんもご多分に漏れずである。

「とにかく衝撃的でした。当時ある雑誌で、ブラック×ロイヤルブルーのムーンストーンのアドバンテージパーカにインディゴのスウェットパンツとラッセルモカシンを合わせていて、すごく東京っぽいと思った。で、兄がアメリカへ旅行した際、エル・エル・ビーンのフリースとバックパックを買ってきてくれて、似たような格好をしていました」。

その後、ビームスへの入社を契機に、ワイルドシングスのデナリジャケットやスポルティバのシューズなど、たくさんのアウトドアウェアに触れることになる。しかし、彼が作る服にわかりやすい“アウトドア感”はない。

ゴアテックスのシューズはノンネイティブの十八番だ。ちなみに、インディペンデントなブランドで、厳しい審査をクリアした“ゴアテックス社の認証サプライヤー”は日本でわずか3ブランドのみ。ノンネイティブはそのうちの1ブランドだ(※2017年の取材時点)。

「ゴアテックスをはじめとした機能的な服を作るときは、いかに普通っぽくほかのアイテムと変わらないように見せるかを考えてデザインしています。今のアウトドアウェアを街で着る流れは、すごく東京っぽいなと思います。フェスとかキャンプに行く行為は“都会の遊び”で、その格好があまりに心地いいから、街でも着る人が増えているのではないでしょうか」。


ノンネイティブ デザイナー
藤井隆行さん(41歳)
ビームスなどでショップスタッフを経験したのち、2001年よりノンネイティブのデザイナーを務める。好きな食べ物は餃子。

3人目:ピルグリム サーフ+サプライ ブランドディレクター クリス・ジェンティールさん

「普通の人もサーファーも機能的な服を求めているんだ。だって快適だからね」

「雑誌や書籍はインスピレーションの源」とクリスさん。

「アウトドアブランドの服を意識して着るようになったのは、サーフカルチャーにどっぷり浸かった頃から。本来の用途とは違うかもしれないけれど、パタゴニアやザ・ノース・フェイスのフリース、グレゴリーのバッグは、サーファーにとっても実用的だったんだ」と話すクリスさん。

だから、ピルグリム サーフ+サプライでは、パタゴニアなどのアウトドアブランドを当たり前のように扱っている。

この日もアメリカでは取り扱っていない日本企画のザ・ノース・フェイス パープルレーベルのダウンジャケットに一目惚れし、さっそく購入したという。

彼が今注目しているのは日本発のアウトドアブランド。

「日本のデザイナーのオリジナルを編集する能力は、間違いなく世界トップレベル。ミリタリーとアウトドアの機能を掛け合わせたノンネイティブなんて最高だし、キャプテン サンシャインみたいなクラシックをアップデートさせたブランドもある。細部まで本当にこだわっていて、着やすくて長く使えるのがいいよね」。

なぜ街はアウトドアの服を必要としているのか? という問いには次のように答える。

「アウトドア物はサーファーにとっても有用だった。だから街で着ても当然、快適だよね。その機能性と心地良さに、みんなが気付いたからだと思う。ニューヨークでは5年ほど前から、’70〜’90年代のアウトドア物が注目されている。自分も’70年代のウィルダネスエクスペリエンスやバナナ イクイップメントのマウンテンパーカを、気に入って着ているんだ。日本語だと温故知新って言うのかな?」。


ピルグリム サーフ+サプライ ブランドディレクター
クリス・ジェンティールさん(44歳)
ニューヨークで写真家としてキャリアをスタート。現在はブランドのディレクターとして活躍する。好きな食べ物はおにぎり。



4人目:モヒート デザイナー 山下裕文さん

「1992年の“ニュースポーツ”こそ、アウトドアが街着に昇格した原点ですね」

機能素材、シンサレートを採用したモヒートのジャケット。

「アウトドア物がカッコいいと思ったきっかけは、映画『ディア・ハンター』でロバート・デ・ニーロが着ていたオレンジ色のマウンテンパーカ。19歳のときに、映画と同じオレンジ色を購入したのですが、これが本当に素晴らしい服で、DCブランドとは違い、機能美があった。今でも大切に持っている僕の原点です」。

世の好事家を唸らせる服を提案するモヒートの山下さん。自身のモノ作りについてもアツく語る。

そして、原宿にあった伝説のショップ、プロペラの運営会社に入社し、’90年代初頭に起きたシーンの大転換期を最前列で目の当たりにする。

「新世代ブランドが続々と日本に流入し、それまでアメカジスタイルをしていた子たちが皆、アウトドアスタイルへと一変しました。流れがガラッと変わったことを鮮明に覚えていますよ。今考えると、プロペラが供給し、『ポパイ』が提唱した“ニュースポーツ”スタイルというのは、今のアウトドアの服を街で着るスタイルの起点になったのではないかと思います」。

それから25年が経ち、今そのスタイルがマスに降りてきているわけだが、それには人々のライフスタイルの変化が大きく関係している、と山下さんは分析する。

「スーツを着なくてもいい仕事が増えてきているし、日常的にスポーツを楽しむ人が増えてきている。そうなると、動きやすくて働きやすい機能的な服が注目されるのは当然ですよね。アメリカのアスレジャームーブメントとは違う、アウトドアとスポーツが融合した日本流のスタイルが発展することを期待しています」。


モヒート デザイナー
山下裕文さん(49歳)
原宿のアメカジショップ、プロペラでプレスやバイヤーとして活躍したのち、モヒートをスタート。好きな食べ物はザンギ。



5人目:バンブーシュート バイヤー 甲斐一彦さん

「都市とアウトドアをつなぐ“良い位置感”のブランドが不足しています」

いつも着ているパタゴニアのMARSダスパーカ。

’80年代後半、甲斐さんが没頭したのはアメカジ。リーバイスの501、レッド・ウィングのブーツ、エディー・バウアーのダウンなどを愛用していたという。そんな“古き佳き時代のアメリカ”の体現者だった甲斐さんは、1991年に“現在進行形のアメリカ”の体現者へと鞍替えする。

「原宿のショップ、プロペラでマーモットやムーンストーンの鮮やかな配色のマウンテンパーカを見たときの衝撃は、今でも忘れられません。以降、レッド・ウィングのアイリッシュセッターがナイキのACGやテバに変わり、ヴィンテージのジーンズがグラミチに変わり、チャンピオンのスウェットシャツがチャムスに変わった。常識を覆す新しいアイテムが続々と出てきた本当に面白い時代で、アウトドア物にのめり込むキッカケとなりました」。

バンブーシュートは東京のアウトドア派の聖地だ。

甲斐さんは’98年、以前は蒲田にあったバンブーシュートを、会社に掛け合って東京・中目黒に再オープンさせる。

「’90年代後半は、アメリカのブランドが、自国での生産を軒並み終了していく時期で、その旧製品やタグに対する駆け込み需要、というかブームみたいな流れがありました。追い風を感じていたのは事実ですね。個人的には、この頃から山に行くようになって、より機能に重きを置くようになりました。

やっぱり誰にとっても機能は魅力的なんですよ。東京の街を休日に歩くと、みんなどこかにアウトドアを取り入れている。でも、まだ都市とアウトドアをつなぐような存在のブランドが不足していると感じます。そんな“良い位置感”のブランドを作るべく、日々動いているところです」。


バンブーシュート バイヤー
甲斐一彦さん(44歳)
渋谷の古着屋、メトロ・ゴールドなどを経て、アウトドアファッションの店、バンブーシュートをオープン。好きな食べ物はカレー。


アウトドアウェアというものが勃興した黎明期から今日にいたるまでをよく知り、ともに歩み、その架け橋となった重要人物たちの言葉だけに、ひと言に重みがある。

総じて言えるのは、アウトドアフィールドのみならず、街でもやはり機能は“正義”であるということ。都市生活を豊かに、軽快に過ごすヒントを、アウトドアウェアは握っているのかもね。

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