履き心地の秘密は靴型と「GEL」テクノロジーにあり
「GEL-Biz」がなぜ“もっと歩ける”のか。その理由を探るために、神戸のアシックス商事本社を訪れた。
そこで目にしたのは最新のテクノロジーと、靴作りに懸ける社員たちの情熱であった。
アシックスウォーキングの革靴を一手に生産。前身の弘吉商事は1955年に創業。神戸のシューズメーカーに資材を供給する商社として、鬼塚株式会社(現アシックス)と取引していた。現在はアシックスの100%子会社である。
神戸市須磨区弥栄台。アシックス商事の本社は、陸上競技場やスタジアムのアクセス駅として知られる地下鉄「総合運動公園」駅の近くにある。訪問の目的はずばり、「GEL‐Biz」誕生の経緯だ。
「そもそも『GEL』とは、1986年にアシックスの研究所が開発した素材です。ソフトシリコンを樹脂フィルムに封入した『αGEL』が、衝撃緩衝材としてランニングシューズのミッドソールに搭載されました」(ブランド戦略チーム・鈴木徹さん)。
現在も進化を続ける「GEL」テクノロジーであるが、実は開発から程なく、同社の革靴に「αGEL」が採用されている。90年のことだ。つまり「GEL」搭載のノウハウの歴史は長く、採用モデルも多数リリースされている。
では今回デビューを果たした「GEL‐Biz」は、これまでの革靴と何が違うのだろうか。
「見た目の良さと機能の両立、そしてグッドプライスの実現です。リサーチは2022年から開始。アシックスのスニーカーで既に『GEL』の存在を知っている、若い世代へ向けた革靴なんです」(鈴木さん)。
いわばアクティブな大人のための“もっと歩ける”革靴なのだ。15年に登場し、発泡させることで大幅な軽量化を実現した「fuzeGEL」を採用する。これを足裏全面に配置している点が、「GEL‐Biz」の機能面における最大の特徴だ。
「GEL-Biz」のソール。つま先から踵まで足裏全面に「fuzeGEL」を搭載する。アシックスのビジネスシューズ史上、最大容量の「GEL」を使用。外周はラバーで覆われ、外観からそのテクノロジーをううがい知ることはできない。
「GELの分量や位置、その組み合わせを変えて、4パターンのソールを試作しました。通常、新ソールの開発にかける時間は半年ほど。ですが『GEL‐Biz』に関してはその3倍、およそ1年半という時間をかけました」(ライフスタイルウォーキング企画チーム・黒田大翔さん)。
「GEL」テクノロジーと同様、いや、むしろそれ以上に重要なのが靴型の開発だ。「GEL‐Biz」には2つのラインがあり、それぞれ異なる靴型を使用する。
「オーセンティック」はつま先がやや長めの都会的な靴型。「ラギッド GTX」は丸みを帯びたいわゆるエッグトウで、いい意味で武骨なイメージを醸し出す。
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