「THE ROW」
H25×W43×D16.5㎝ 68万5300円/ザ・ロウ(ザ・ロウ・ジャパン 03-4400-2656)
「シンプルであることは、複雑であることよりも難しいときがある。」
スティーブ・ジョブズ(アップル 共同創業者)装飾を足せば、個性はつくれる。けれど、それを削ぎ落とした先で魅力を残すには、素材や形、つくりのすべてにごまかしが利かない。ミニマリズムを追求したスティーブ・ジョブズの言葉は、もの選びにもそのまま当てはまる。わかりやすい意匠やロゴに頼らないからこそ、素材や仕立てそのものの質が問われる。
ザ・ロウの「マルロ 14」は、上質なレザーを柔らかなフォルムへと仕立てた、きわめて端正なバッグだ。美しい細長のハンドルや繊細なステッチ、手塗りの縁取りといった職人の卓越した仕事も、ことさらに主張することはない。余計なものを足さず、それでも物足りなさを感じさせない。語らずとも伝わる圧倒的なクオリティに、シンプルであることの強さが表れている。
「GIORGIO ARMANI」
タキシード75万9000円、シャツ参考商品、タイ参考商品/すべてジョルジオ アルマーニ(ジョルジオ アルマーニ ジャパン 03-6274-7070)
「正装する、ということは愉しいことである。」
伊丹十三(映画監督・デザイナー・エッセイスト)好きな服を、好きなように着る。それもファッションの愉しみだが、ときにはルールに自らを委ねてみるのも悪くない。伊丹十三は『ヨーロッパ退屈日記』(新潮社)で、正装には自らを縛ることで生まれる「快い、緊張った安堵」があると記した。
今季のジョルジオ アルマーニから選んだ、しなやかなウールクレープ仕立てのタキシードに袖を通せば、背すじが伸び、所作まで少し変わる。決まりごとは自由を奪うものではなく、気持ちを切り替えるためのスイッチにもなるということ。
服に自由を求める時代だからこそ、あえて型を受け入れ、そのなかで振る舞うことを楽しむ。自らを律することで生まれる心地良い緊張もまた、正装ならではの贅沢だ。
OCEANS12月「High STANDARDs.」号から抜粋。さらに読むなら本誌をチェック!