「ビジネスは決して甘くない。だからこそ“折れない心”が必要」
ボディメーカーのスパーリング用グローブ。「本革ですが、柔らかく手に馴染みやすいので気に入っています」。
──積極的にキックの練習を続けて3カ月ほど経過した頃、「スタミナとパワーが増し、テクニックも磨かれてきた」と実感した衛藤さん。7年が経過した現在では、小比類巻さんも「ここまでがむしゃらに手数を出せる選手は少ないんです。こういうタイプがいちばん怖い」と、選手としての実力を十分に認めている。だが、小比類巻さんが主催する「EXECUTIVE FIGHT BUSHIDO」への参加は、いまだ考えていないという。衛藤 ビジネスパーソンですから、やっぱりケガが怖いですよね。その不安を振り払って「BUSHIDO」に参加する仲間たちの姿には、本当にリスペクトしかありません。でも試合に出なくても、キックボクシングというスポーツは確実に自分を成長させてくれるんです。フィジカルもテクニックもまだまだ伸ばせる。本当に奥が深いと思います。一方でキックも仕事も、サボったとたんに成長が止まってしまいます。そうですよね?
小比類巻 私も現役時代は、サボることなど頭にありませんでした。「魔裟斗もアンディ・サワーも、今、めちゃくちゃ練習しているはず」と思うと焦ってしまって。いつも時間が足りないと思っていました。
衛藤 やはり“ミスターストイック”ですね(笑)。1日が24時間しかないのは誰でも同じ。効率よくタスクを進めて成長速度を上げれば、早く成功を導き寄せることができる。でも成功するよりも大事なことがあります。それは「毎日をいかに真剣に過ごすか」ということなんです。
小比類巻 それはベンチャーキャピタルというビジネスを通じて得た知見ですか?
衛藤 はい。私たちが投資するのはスタートアップですが、彼らが最初に考えたスキームがそのまま成功する例はほとんどありません。トライアンドエラーを繰り返し、方向性と可能性を探りながら、粘り強く勝ち筋を見つけていく。結果が出るのが5年先、10年先ということも珍しくありません。そのために必要なのは毎日の真剣勝負と、何があっても折れない心なんですよ。
「ワンツーからのフック、そしてローキックという“角線のコンビネーション”が衛藤さんの持ち味。オランダ系ですね」と小比類巻さん。
小比類巻 なるほど。投資のポイントは「ビジネスを見る目」ばかりではなく、「人を見る目」が重要なんですね。
衛藤 小比類巻さんもそうじゃないですか? 選手をきちんと「見て」いるから、それぞれに合わせた指導ができる。しかも実力の限界ギリギリを見極めて追い込むから、選手も伸びていく。プロの仕事だと思っています。
小比類巻 ありがとうございます。今後は、どんな形でキックを続けていこうと思っていますか?
衛藤 今と同じですね。私は今47歳なのですが、できればこの先も30年、40年と続けていきたいです。年を取って、難しいことができなくなっても構わない。ミットを打ち、スパーリングする。それをずっと続けていきたいと思っています。
──最近、新たなパーソナルジムに通い始めたという衛藤さん。「クロスフィットに取り組んでいます。見せる筋肉ではなく、使える筋肉をつけていきたいと思って」。継続と挑戦。そんな言葉が頭に浮かんだ。それはきっと、キックボクシングにもビジネスにも通底する、衛藤さんならではの生きた哲学なのかもしれない。 [KOHI’s NOTE]
・キックを始めてさらにスタミナが増し、パワーがついた。
・24時間を効率よく使えば成長速度もアップしていく。
・成功はあくまで結果。毎日を真剣に過ごすことが最重要。
・キックボクシングは30年、40年と長く続けていきたい。
OCEANS11月「デニムは、人だ。」号から抜粋。さらに読むなら本誌をチェック!