実はイタリアでも“あるある”炭水化物コンボ
「こんな無茶な食べ方をするのは日本人だけだろう」と気になる方もいるかもしれない。しかし、ヨーロッパに視線を向けると、日本人と同じように炭水化物の魔力に抗えない国がある。そう、僕の故郷イタリアだ。

パスタやピッツァを誇るイタリア人は、食へのこだわりが人一倍強い。「パスタをおかずにパンを食べるなんてあり得ない」と公言するイタリア人も多い。確かに、リストランテでパスタのソースをパンで拭い取る「スカルペッタ」は定番だけど、あれはあくまで皿に残ったソースを味わう作法であり、パスタとパンを同時に頬張るわけではない。
でも、家庭料理を覗くと、実は驚くべき“炭水化物×炭水化物”の文化が息づいている。その代表格が、シチリア州パレルモの名物だ。
ひよこ豆のフリットを挟んだ「パーネ・エ・パネッレ(Pane e panelle)」。シチリア島のパレルモを代表するストリートフード。
ゴマを振った香ばしい丸パンに挟むのは、なんとヒヨコ豆の粉を水で溶いて練り、薄く切ってカリッと揚げたフリット(パネッレ)。豆粉と小麦粉、揚物とパンという、炭水化物バーガーである。揚げたての熱々にレモンをキュッと絞り、塩を振って頬張ると、サクッとした歯ごたえの奥から豆のホクホクとしたコクが広がり、パンの甘みと混ざり合う。これがビールによく合うのだ。
さらにパレルモでは、このパネッレに加えて「カッツィッリ」と呼ばれるジャガイモのコロッケまで一緒にパンへ挟む強者もいる。パン×豆粉フリット×ポテト。日本の「コロッケ焼きそばパン」も裸足で逃げ出すだろう。
北西部のリグーリア州に行けば、ひよこ豆の粉で作る薄焼きクレープのような「ファリナータ」をフォカッチャに挟んで食べるスタイルがあるし、ローマではピッツァ・ビアンカ(具のない塩味のフォカッチャ)に、わざわざ薄切りのジャガイモを乗せて焼き上げる「ピッツァ・コン・パターテ」が老若男女に愛されている。

海を隔てたシチリアの路地裏でも、東京の駅前ロータリーでも、人間が本能的に求める快楽の着地点は驚くほど似通っている。炭水化物を炭水化物と合わせる行為は、一見すると野暮ったいものに思えるかもしれない。健康志向や糖質制限が叫ばれる昨今なら、なおさら肩身の狭い思いをさせられがちだ。
けれど、焼きそばパンをひと口かじった瞬間の、得も言われぬ幸福感はどうだろう。ソースの酸味、パンの柔らかさ、炭水化物が糖へと変わっていく喜び。それは人類が農耕を始めて以来、遺伝子レベルで刻み込んできた「生きるための快楽」そのものである。

日本人は、その原始的な快楽をただ貪るのではなく、出汁や醤油、ソースの技術、そして繊細な食感の組み合わせによって、ひとつの完成された食文化に磨き上げた。これを楽しめる味覚を持っていること自体、実はとても幸福なことなのだ。
もしあなたの海外の友人が「こんな組み合わせ信じられない……」と眉をひそめたら、微笑みながらこう返そう。
「騙されたと思ってひと口食べてみて。理屈じゃない美味さがあるからさ」と。
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