未来の“青”を担う5人のWinners
青い海との共生を目指し、解決案を提示するだけでなく、実際にアクションを起こす。それは決して簡単なことではないが、画期的なアイデアと驚くべき行動力で、課題解決へ果敢に挑む企業や個人は確実に増えている。そんな担い手を表彰するイベントが「THE BLUEKEEPERS AWARD」だ。
今回も昨年同様、豊富な知識を持ち、異なる分野で精力的な活動を行う4人のアドバイザリーボードとOCEANSが、厳正な審査のもとに受賞者を選出。設けられた賞は「OCEANS賞」(最先端の技術やサービスをライフスタイル領域で展開)、「INNOVATION賞」(エポックメイキングな新技術や製品作りにおける目覚ましい成果)、「LOCAL ENGAGEMENT賞」(地域の特性を活かした新しいアクション)、「NEW LEADER賞」(次の10年を担う活動やサービスを提示した次世代リーダー候補)、「特別賞」(持続可能な海に対する長年の活動と総合的な貢献)の5部門だ。対象は、いずれも企業および個人で、国内外を問わず活躍する5人が受賞を果たした。
船上で喜びを語った受賞者は、専門領域こそ違えど、世界で何が起きているのか、美しい海と健全な環境を保つために何が必要かを口々に訴え、今できる具体的な施策を挙げた。海洋・環境保全とビジネス、そして新しいカルチャーが垣間見える受賞者たちのメッセージは、どれも興味深く、粘り強く実践する者の説得力に満ちていた。ここではそんな彼らの活動内容の概要とコメントを紹介しよう。
Winnerを選出したアドバイザリーボード | セイラーズフォーザシー 日本支局 理事長 井植 美奈子さん 京都大学博士(地球環境学)・東京大学大気海洋研究所 特任研究員。総合地球環境学研究所 特任准教授。OCEANS SDGsコンテンツアドバイザー。ディビッド・ロックフェラーJr.が設立した海洋環境保護NGO「セイラーズフォーザシー」の日本支局創始者。マリンスポーツの環境基準「クリーンレガッタ」などのプログラム開発や運営を手掛ける。 | | 株式会社北三陸ファクトリー 代表取締役CEO 下苧坪之典さん 地球規模の海洋課題である「磯焼け」を解決に導く「再生養殖技術」を北海道大学等と産官学で確立。低品質なウニを極上の美味へと育て上げ、海洋生態系と新産業創出を同時に実現させた。世界基準のブルーエコノミーを牽引し、2025年Forbes JAPAN「食の未来を輝かせる25人」にも選出。日豪を拠点にリジェネラティブな海洋の未来を切り拓く。 | | 一般社団法人Chefs for the Blue 代表理事/フードジャーナリスト 佐々木ひろこさん ガストロノミーと食のサステナブルをテーマに国内外で活躍するジャーナリスト。2017年、日本の海の危機的な状況を前に「Chefs for the Blue」を立ち上げ、トップシェフたちとともに日本の水産資源を守り、食文化を未来につなぐための啓発活動を開始した。農林水産省 水産政策審議会特別委員、同省「日本食普及の親善大使」選考委員などを歴任。 | | 一般財団法人冬季産業再生機構 代表理事/スポーツ庁スポーツ審議会委員 皆川賢太郎さん 1998年長野、2002年ソルトレークシティ、06年トリノ、10年バンクーバーと、4大会連続でアルペンスキー日本代表として冬季オリンピックに出場。14年に引退し、翌年全日本スキー連盟理事に就任。以後、競技本部長などを歴任し、20年の退任後は、一般財団法人「冬季産業再生機構」会長などを経て、25年にスポーツ庁スポーツ審議会委員に就任。 | |
[OCEANS賞]
水辺を安全、かつクリーンに
元競泳日本代表/スポーツジャーナリスト/日本サーフィン連盟理事
松田丈志さん競泳選手を引退後、日本ライフセービング協会の資格を取得し、水辺の安全を守る活動を行ってきた松田丈志さん。そのきっかけは、現役時代の海外合宿中に目にした光景だった。サマースクールに参加していた子供たちが、海で溺れる人を救助するためのレッスンを受けていたのだ。「人を助ける術を学べば、自分の泳力も世の中のために活かせるはず」。そんな思いが活動の根底にある。
さらに、日本財団が推進するスポGOMI事業にも参加し、「年齢や性別、ハンディキャップの有無を問わず、スポーツ感覚で楽しめる海のごみ拾いも広めていきたい」と語る。こうした海を守る精力的なアクションが、今回の受賞へとつながった。
[INNOVATION賞]
漁業活動や船舶の動きを可視化
Global Fishing Watch, CEO
Tony LongさんGlobal Fishing Watchは、世界の海洋における漁業活動や船舶の動きを、人工衛星、AI、機械学習といった最新技術で可視化・監視するNPO法人だ。違法漁業の情報を提供するなど、海全体の健全性を高めることに寄与する革新的な技術とアイデアが高く評価され、INNOVATION賞を受賞。
CEOのTony Longさん曰く「私たちの活動は、見えないものは管理できないという明確な前提のうえに成り立っています。そして大切な海が、持続可能かつ公平に利用されるために、日々膨大で複雑なデータを収集・解析しています」。彼らのマインドと技術は、人類にとってなくてはならない、新たなるスタンダードになろうとしている。
[LOCAL ENGAGEMENT賞]
生命の根源となる藻を有効利用
株式会社AlgaleX 代表取締役社長
高田大地さん沖縄という風土を活かした功績が評価されLOCAL ENGAGEMENT賞に選出されたのは、泡盛粕と藻を利用し、水産養殖の餌に欠かせない魚油の代替となるDHA「うま藻」の生産に成功したAlgaleXだ。代表取締役の高田大地さんはスピーチで、世界中で海の魚が急激に減っている現状を説き、その課題解決に、藻が重要な役割を果たすプロセスを丁寧に語った。
「エビやカニが美味しいのは藻を食べているから。そして大切な栄養であり成分であるDHAも、実は藻が作り出しているのです」。同社が開発したカラスミのような味わいの「うま藻」は、一般消費者が美味しく食べられる調味料としても大きな注目を集めている。
[NEW LEADER賞]
海藻由来の飼料でメタンを削減
Sea Forest, Head of Research and Development/Sea Forest Foundation, Science Lead
辰巳正幸さん赤い海藻「カギケノリ」を使った飼料「SeaFeed」を牛や羊に与えることで、家畜から排出されるメタンの量を大幅に削減する。そんな革新的な取り組みを行っているオーストラリア・タスマニア州のSea Forest社には、次世代を担うリーダー的な活動を讃え、NEW LEADER賞が授与された。
受賞にあたり研究開発責任者の辰巳正幸さんは、「これから世界中の牛や羊が、海藻を食べて育つのが当たり前となる新しい常識をつくっていきます」と力強いコメントを寄せた。また、現在、タスマニアの巨大な海藻が環境変化で失われている現状を報告し、海を守ることが、人や動物、自然全体の営みを守ることに直結すると訴えた。
[特別賞]
皆の力で海洋保全大国を目指す
サラヤ株式会社 代表取締役社長/NPO法人ZERI JAPAN 理事長
更家悠介さんこれまでBtoC領域で、サステナブルを掲げた数々の実績を持つサラヤ。代表取締役の更家悠介さんは、NPO法人「ZERI JAPAN」の代表も務め、昨年は大阪・関西万博にて海洋環境に特化した「BLUE OCEAN DOME」の展示に尽力した。1週間ごとに、海洋にまつわる国内外のリーダーを招き、その強烈なメッセージを世界へと発信する機会を設け、多くの話題を呼んだ。
「海に流れる年間800万トンのプラスチックごみをなんとかしなければならない」。そんな思いとともに、日本が海洋保全分野で世界No.1となる意気込みを語った。これまでの多大なる功績と未来を見据えた活動を讃え、本アワードでは異例となる特別賞を受賞。
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