
服もギアも家電も、そしてもちろん車も「黒」は人気の色。とはいえ、黒ならなんでもいいわけではない。
あらゆる黒アイテム同様、車にも“大人の黒”というものが存在する。そんな黒を名乗るに相応しい車を紹介しよう。
ジョン・レノンも存命なら買ったに違いない「ブラック・バッジ」
ジョン・レノンの「ファントムV」ではかなわなかったと言われている、ダーク仕様の「スピリット・オブ・エクスタシー」。
「ブラック・バッジ」とは、2016年からロールス・ロイスがシリーズ化しているスペシャルモデルのこと。現在、EVのクーペ「スペクター」と、6.75LのV12ツインターボを搭載するセダン「ゴースト」、同エンジンを載せたSUV「カリナン」の3車種に設定されている。
ロールス・ロイス カリナン ブラック・バッジ。V12ツインターボは最高出力571PS→600PSに、最大トルク850N・m→900N・mに高められている。
現行型(シリーズII)からライトアップされるようになったカリナンのパンテオン・グリル。
そこに降り立つ同社のアイコン「スピリット・オブ・エクスタシー」は、通常ならシルバーのところ、ブラック・バッジはダーク仕様になる。
もちろん、ただ黒く塗ったのではなく、このために開発された特殊なメッキ技術で、深みのある黒に仕上げられている。一事が万事、この調子でほかの「黒」も職人技で仕上げられている。
インパネに貼られるカーボンファイバーパネルは、ラッカーを6度塗りした後に72時間かけて硬化され、手作業で鏡面仕上げが施されている。
ブラック・バッジシリーズの元をたどれば、1964年にジョン・レノンが発注したロールス・ロイス ファントムVにたどり着く。
内外装のすべてを黒に統一してくれ、という彼の要求、例えばスピリット・オブ・エクスタシーのブラック化は、ラグジュアリーの象徴だったロールス・ロイスから拒否されたとも言われる。
シート中央の黒い部分(デュアリティ・ツイルのテキスタイル)は、最大220万のステッチと11マイルの糸を使った複雑な刺繍が施されている。
時代が変わってカリナンのブラック・バッジは、通常よりもエンジンはパワーアップし、それに伴いブレーキやトランスミッションなども強化されているなど、いろいろとすごいところがある。
けれど、やはりジョン・レノンが示した“ラグジュアリーにおける反逆の美学”を、見事に表現しているところが、ブラック・バッジシリーズの最大の魅力だろう。
メルセデス・ベンツが不定期にリリースする、ダークなフラッグシップ
メルセデスAMG GTブラックシリーズ(手前)と、GT3(奥。GT3規定に適合したレーシングカー)のカモフラージュモデル。
不定期に、そして限られたモデルのみに冠される「黒」もある。
メルセデスAMGの「ブラックシリーズ」だ。同シリーズは「ダーク・フラッグシップ」だとも同社は表現している。メルセデス・ベンツの裏のトップモデル、といったところだろう。
一番上(シルバーボディ)から時計回りに CLK 63 AMG、SLK 55 AMG、SL 65 AMG、SLS AMG、GT、C 63 AMGクーペの、ブラックシリーズ。
はじめて登場したのは2006年のこと。オープンカーのSLKに5.5LのV8を載せたSLK 55 AMGをベースに、「公道走行も可能なレーシングカー」にまで性能が極限まで磨き上げられた「SLK 55 ブラックシリーズ」が登場した。
2020年に登場したGTブラックシリーズ。
さらに2007年にはCLK(Cクラスベースのクーペ)を、08年にはSLを、11年にはCクラスクーペを、13年にはSLS(ガルウイングのスペシャルモデル)を、20年にはGTをベースにしたブラックシリーズが登場している。
そして今年6月に、メルセデスAMGは現行型GTをベースとした新たな「ブラックシリーズ」の登場を予告。
2020年に登場したGTブラックシリーズ。ニュルブルクリンク北コースで当時の最速ラップタイムを記録した。
6年前の先代GTをベースとしたブラックシリーズは史上最強のAMG製V8エンジンを搭載し、最高出力730PSを誇ったが、間もなく登場する新ブラックシリーズは1000PSを超えるのでは?と言われている。
間もなくやってくる、ダークサイドからの来訪者を心待ちにしよう。
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