身体という楽器を、どう鳴らすか
『霞日和』のレコーディングでは、1950〜60年代のヴィンテージマイクを使ったという。
「ちゃんとメンテナンスしていても、古いマイクっていい時と悪い時があるんです。今回、そのマイクの調子がすごく良かったんですよ。不思議ですよね。同じものなんですけど、この3年くらいは実はあまり良くなかった。でも今回は、すごく良かったんです」。
いつも同じ状態ではないものと向き合いながら、自分の感覚に合う瞬間を探していく。その姿勢は、古いインディアンとの付き合い方にも、歌にも重なっている。

「自分の強みがあるとすれば、身長や体格なのかもしれません。楽器で言えば、チェロとバイオリンくらいの差がある。僕も声帯が長い分、ハイトーンが出にくい一方で、太く鳴らせる。その特性をどう使っていくか、ということだと思います」。
ただし、身体の特性と、本人が歌いたい歌は必ずしも一致しない。だからこそ、必要になるのが技術であり、知識だ。
「その時々で声を太く鳴らしたくないこともあります。そのときに必要になるのが、技術であり、知識なんです。たとえば、20年前に自分が思っていた『太い声』と、今回の『霞日和』のAメロの頭で出している『太い声』は、実は技術的にはまったく違うものなんです」。
声は変わる。歌い方も変わる。だからこそ、その時々の自分の身体と向き合いながら、鳴らし方を探していく。
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「だから、歌って難しいですね。でも、それが楽しいです」。
古いインディアンは、いつも機嫌よく走るわけではない。ヴィンテージマイクも、毎回同じ音を返してくれるわけではない。だからこそ、手間をかけ、耳を澄ませ、自分の感覚に合う瞬間を探していく。
黒田さんのスタイルは、好きなものを選び、使い込み、鳴らし続けてきた時間そのものなのだ。