アセットライトが可能にするスピード展開
興味深いのは「KOKO HOTELS」が“運営”主導のブランドであることだ。ホテル業界には、自社で土地や建物を保有する“オーナー型”の企業も多い。一方、「KOKO HOTELS」はアセットライト、つまり運営を軸に成長するモデルを採用している。
「ホテルを一棟開発するには、数十億円単位の資金が必要です。すると、出店スピードはどうしてもスローになる。我々は不動産ではなく、運営力とブランド価値で競争力を高めていきたいと考えています」(田口)
これは、世界のホテル業界でも進んでいる潮流だ。マリオットやヒルトンのようなグローバルブランドも、不動産保有より“ブランドと運営”を強みに成長してきた。
「KOKO HOTELS」もまた、不動産保有ではなく、“地域体験をどう設計するか”を競争力として、日本全国への展開を進めている。もっとも、運営会社型にも難しさはある。チェーン展開を進めれば進めるほど、ブランドの統一感と地域性の両立が難しくなるからだ。
「全部をトップダウンで統一すると、“どこへ行っても同じホテル”になってしまう。でも逆に、現場に任せすぎるとバラバラになる。そのバランスは少々難しいですね」(下嶋)
現在、同社は全国を11の地域に分け、エリアトレーナー制度を導入。サービス品質を一定水準で保ちながらも、地域らしさを表現できる体制づくりを進めている。
「チェックイン・アウトなどオペレーションなら、ある程度標準化できます。でも私たちが本当に届けたいのは、“この街を知ってほしい”という想いなんです」(下嶋)
下嶋一義 ポラリス・ ホールディングス 取締役兼最高執行責任者。
そうした考え方は、今後のブランド展開にも色濃く反映されており、大分・別府では温泉文化をテーマにした「kokonoyu」、沖縄・那覇ではアップスケールブランドのホテルを計画。さらに、長期滞在型アパートメントホテルの展開も進めている。だが、この新ブランドの展開も、単なるポートフォリオ拡張を目的としたものではない。ポラリス・ホールディングスが一貫して重視しているのは、それぞれの土地に根ざした体験価値を、いかに宿泊体験へ落とし込むかという視点だ。
「カテゴリーや価格帯が変わっても、その土地の文化や地元の人との接点をどう生み出すか、という根底の思想は共通しています。それはFeel The Local、日本の地域性を感じていただくということ」(田口)
“寝るだけ”のホテルではなく、地域の文化や歴史、人との接点を生み出す場所へ……。「KOKO HOTELS」が目指しているのは、“泊まる”を超えて、街へ一歩踏み出すための新しい旅の起点なのである。
ポラリス・ホールディングスhttps://koko-hotels.com/
たぐち・ようへい◎ポラリス・ホールディングス代表取締役社長。ITコンサルティング、ホテル運営、ホテルリート運用企業などを経て、ホテル開発・運営の両面に携わる。2022年よりポラリス・ホールディングス取締役として運営・開発事業を統括し、2025年より現職。
しもじま・かずよし◎ポラリス・ホールディングス取締役兼最高執行責任者。ホテル・旅行業界でマーケティング、ブランド戦略、国際事業に従事。国内外のホテル運営やオンライン旅行事業に幅広く携わり、2021年よりミナシア代表取締役社長、2025年より現職。