
大人になるとは、自分の中にどんな物差しを持つことなのか。映画監督の是枝裕和さんは、自分を大きく見せることを求めない。作品、仕事、装いの話から見えてきたのは、飾らず、浮かれず、それでも自分の芯を手放さない姿だった。
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是枝裕和(これえだ・ひろかず)1962年、東京都生まれ。映画監督、脚本家、編集者。1995年に『幻の光』で長編映画監督デビュー。『誰も知らない』(2004年)、『そして父になる』(2013年)、『海街diary』(2015年)などを発表し、国内外で高い評価を得る。2018年の『万引き家族』では第71回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞し、第91回アカデミー賞外国語映画賞にもノミネート。近年は『真実』(2019年)、『ベイビー・ブローカー』(2022年)など海外の映画人との協働も本格化。Netflixシリーズ『舞妓さんちのまかないさん』(2023年)、『阿修羅のごとく』(2025年)など、映画にとどまらず幅広く作品を手掛けている。
「消費は美徳ではなかった」是枝裕和、モノとの距離感

まず初めに、装いのこだわりについて尋ねると、是枝さんは少し困ったように笑った。「たぶん、雑誌に相応しくない発言になると思う」と前置きしたうえで、語り始めたのは消費との距離感だ。
「決して下の世代を否定するわけではないんだけど、僕らの世代くらいまでは、消費は美徳ではなかったんです。物を買うことが、自分のアイデンティティにつながるという感覚が、あまりなかったんですよね。だから未だに高いものを纏うと、少し落ち着かないんです。
普段身に着けるものはとにかく、自分の体型に合うもの。肌触りが良くて楽なものしか着ないですね。時計とネクタイが、とにかく嫌いで(笑)。どちらも巻いている部分に汗をかくじゃないですか。締め付けられる感じもあるし。とはいえ映画祭だと着けなくちゃいけないのでとても辛い。
窮屈な革靴、ネクタイ、時計。全部苦手ですね。だけど、そういう場所だからと受け入れ、今は楽しんでいますよ」。
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