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2026.05.11

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「ハイランドパーク」の味わいの秘密を現地調査。過酷な自然が磨いた甘くスモーキーなウイスキーに迫る

©HIGHLAND PARK

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ウイスキーのオリジンを感じさせる“ピート”香。ピートとはシダやコケなどの植物が長い年月をかけて堆積した泥炭のことで、その土地が育んできた歴史が個性豊かな燻香を生み出す。だが、この香りの虜になる人もいれば、苦手という人もいる。

そこで試してもらいたいのが「ハイランドパーク」だ。香り高く、それでいて飲みやすい「ハイランドパーク」の味わいはどこから生まれるのか。現地でその秘密を覗いてきた。

1. 密造酒から始まった「ハイランドパーク」の歴史

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訪れたのは、スコットランド北東の沖合に浮かぶオークニー諸島。ハイランドパークの物語は、1798年にその起源を持つ。始まりは、この地で密造酒をつくっていたマグナス・ユンソンに遡る。教会の役人でありながら密かに蒸溜を行っていたハイランドパークの原点を作った彼の存在は、いまなお蒸溜所の伝説として語り継がれている。

彼は残念ながら逮捕され、スコットランド本土へ送られてしまうが、なんとその彼を逮捕した役人がこのオークニーの地でそのままハイランドパークを蒸留所として正式に設立させる。「密造は罪であっても、酒に罪はない」と思わせるほどに、その味わいは人々を惹きつけるものだったのだろう。

2. 華やかな甘さと奥行きあるスモーキーさを両立する「ヘザー由来のピート」

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冒頭でも記述した通り、ピートとは植物が堆積してできた泥炭である。つまり、ピートが採取される自然環境やそこに生息する植物がピーテッド製法で作られるウイスキーの香りを左右する。

ではハイランドパークでは、どんなピートを使っているのか。同社が所有するピートの採取地へ足を運ぶと、樹木がほとんど生えていない荒涼とした景色が広がっていた。

ガイドを務めてくれたカレンさんによると、「この島は年間を通して曇天が多く、海からの強風が吹き荒ぶため、樹木が育たないんです。でもそんな環境の中で地面にしがみつくように生息しているのがヘザーなのです」。

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ヘザーは白やピンクの小さな花を咲かせる低木で夏に最も花をつけ、島一面に甘く芳醇な香りを放つ。オークニー島のピートにはこのヘザーが数千年もの時をかけて凝縮されており、それがハイランドパークにスモーキーでありながら華やかでふくよかな甘みをもたらすのだ。

「このオークニー島のヘザーピートを使っているのは、ハイランドパークだけなんですよ」とカレンさん。“ウイスキーのテロワール”とも言える個性をぜひ感じてみてほしい。

3. 伝統的なフロア・モルティングを継承する希少な蒸溜所


原料の大麦を発酵させて麦芽を作る「モルティング」は、ウイスキーづくりにおいて非常に重要な工程だ。

このモルティング、一般的には機械化されるのが主流だが、ハイランドパークでは昔ながらの「フロア・モルティング」を行っている。

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「床一面に大麦を広げ、モルトマンが5〜7日間、24時間体制で8時間おきにシール(Shiel)と呼ばれる木製のスコップ振るい、手作業で天地を返しています。これにより大麦に空気が行きわたって発芽に伴う熱が均一になるのです」と蒸留所を案内してくれたトムさんは語る。

この作業には、発芽した大麦の根が絡まないようにしたり、夏は薄く、冬は厚く敷くなど、温度管理を見極めたりと熟練の技術が求められる。

発芽した大麦はその後、「キルン」と呼ばれる乾燥塔に運ばれ、先のヘザーピートを使い低温でじっくりと乾燥させていく。温度や湿度が高すぎると酵母や菌が死滅してしまうため、時間をかけて乾燥させることが重要なのだ。

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「フロア・モルティング」は重労働で時間もかかるうえ、大麦を広げる広い施設も必要となる。それにもかかわらず生産効率は高くない。そのため現在でもこの伝統製法を継承している蒸溜所はハイランドパークを含め、スコットランドでわずか8カ所のみだ。

それでもこの製法が守られているのは、時間と手間をかけることでしか生まれない味わいがあるからだ。

4. シェリー酒でシーズニングしたこだわりの樽を使用

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ウイスキーはその色彩の100%、風味の約60〜80%が樽に由来すると言われている。そのため多くのウイスキーメーカーが樽を購入するのに対し、ハイランドパークでは樽の製造工程のすべてを自社で管理している。

「なかでもこだわっているのが、樽のシーズニングです。ハイランドパークではアメリカ産のアメリカンホワイトオークと、スペイン産のヨーロピアンオークで作られた樽を使っていますが、どちらも実際に使う前に、シェリー酒が詰められ、最長2年かけてシーズニングを行っています」。

使われるシェリー酒は本場スペイン・へレスの最高級品質のもの。このシェリー樽を使い、時間をかけて熟成させることで独特のコクや複層的な風味がウイスキーへと溶け込んでいく。

5. ウイスキー熟成に最適なオークニー島の自然環境

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「エンジェルズシェア」という言葉をご存知だろうか。木樽は呼吸をしているため、熟成期間中に液体が蒸発し、中身が自然に減っていく。この蒸発分が「エンジェルズシェア=天使の分け前」と呼ばれているのだ。

この蒸発量は気温や湿度に大きく左右されるが、オークニー島は夏でも約19℃、冬でも約2℃と気温が低く安定しているため、年間の蒸発量はわずか0.5%以下という驚異的な少なさを誇る。

一般的なシングルモルトウイスキーのエンジェルズシェアの平均が2〜4%であることを考えれば、オークニー島がいかにウイスキーを穏やかで贅沢に熟成させる環境であるかがわかるはずだ。

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またハイランドパークでは、伝統的なダンネージ式熟成庫の「第12貯蔵庫」が現役で稼働している。

「土の床に木のレールを敷き、樽を積み上げるのですが、下の樽に過度な荷重がかからないように、ハイランドパークでは3段までと決められています」。

一見、非効率にも思える方法だが、土の床により湿度が高くなり、熟成速度がさらにゆっくり進むのだ。こうした環境のもとでじっくりと熟成することで、カスクストレングスのようなアルコール度数の高い原酒でも滑らかで飲みやすい口当たりが生まれる。

6. 未来を見据えたサステナビリティへの取り組み

自然の恵みが凝縮されたウイスキーの味わいを守るため、ハイランドパークではサステナビリティへの取り組みも積極的に行われている。

2024年に行われた大規模な改修工事では、大麦の乾燥工程を石炭から温風乾燥システムへと切り替え、CO2排出量を約20%削減。また、製造過程で出た大麦のかすは、地元の農家に提供され、家畜の飼料として活用されている。

そして、最も力を入れているのがヘザーピートの再生だ。

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ウイスキーの味わいを左右するオークニー島のヘザーピートは、1年で蓄積される層が1mmに満たない。無計画に採掘すれば短期間で失われてしまう資源である。

「かつては機械によって広範囲を一度に掘り起こす採掘方法が行われていました。ただ、それだと地面をすべて剥ぎ取ってしまうため植生が失われ、ピートが蓄積しなくなってしまいます。そこでハイランドパークでは現在、手作業に回帰しています。表面の植生をめくってピートを採取し、その後、植生を戻すことでピートの再生を促しているのです」(前出、カレンさん)。

さらに過去に機械によって採掘された土地の再生実験も進められており、水資源を保持する環境づくりなど長期的な視点での取り組みが続けられている。

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現在、ピートは法律で採取量が厳密に定められているが、ハイランドパークではそのすべてを使い切ることはない。使用する分だけを削り出すのはもちろん、蒸溜所の効率化によりピート使用量の削減も実現した。

これらの取り組みの成果が現れるのは何千年も先のことになるだろう。それでも未来のウイスキーのために、ハイランドパークは気の遠くなる試みを続けている。

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島の歴史と自然が溶け込んだピート香を纏うハイランドパークのウイスキー。その唯一無二の味わいを堪能してほしい。

[問い合わせ先]
三陽物産
TEL:06-6352-1124
https://sanyo-brands.jp/lp/highlandpark/

林田順子=文

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