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▶︎すべての写真を見るザ・マッカランの“究極の樽づくり”を紐解いた
前回に続き、今回は1824年の創業以来、世界中で愛されるウイスキーを作り続けている蒸溜所「ザ・マッカラン エステート」を訪ねた。
そこで感じたザ・マッカランのロマンを“12のコト”に詰め込んだ本企画の後編をお送りする。
▶︎ 【ロマン1〜5】シングルモルトの最高峰を“樽づくり”から知る!を読む 6. 原酒からすでに最高峰。他の追随を許さない最新技術
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ウイスキーづくりは大麦を発酵させ、蒸留し、原酒を作るところから始まる。
「ザ・マッカラン蒸留所は2018年に改装し、最新技術により発酵と蒸留がフルオートメーション化されました」と語るのは、ウイスキー製造総責任者を務めるカースティーン・キャンベルさん。
ウイスキー製造総責任者のカースティーン・キャンベルさん ©The Macallan
「1度目の蒸留で水とアルコールを分け、2度目の蒸留でアルコール度数を上げるのですが、このとき私たちは『キュリアスリー・スモール・スティル』と呼ばれる、他に比べて非常に小さく、背の低い蒸留機を使います。というのも、蒸留をするにあたり重要なことが3つあるからです。
それは『クリアにすること』『きれいにすること』、そして『凝縮させる』ことです。小さな蒸留機を使うと凝縮度が増し、パワフルでフルーティなニューメイクスピリッツが生まれます。これが私たちのシェリー樽と完全に調和するのです」(カースティーンさん、以下同)。
同じように蒸留しても「人の指紋みたいなもの」で、その味わいは微妙に異なるという。36基ある蒸留機それぞれの個性が、ザ・マッカランの複雑な味わいの層を作り出すのだ。
7. 熟成8年以上にこだわる“時”のロマン
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ウイスキーと名乗るためには、法律で3年以上の熟成が必要と定められている。だが、ザ・マッカランはそれを大きく超えて、最低でも8年は熟成させないと世に送り出さない。
「8年経った樽は、すべて1度サンプリングを行います。色がどのようについているか、風味がどう成長したかを確認し、それぞれの樽の個性に合わせて、いつボトリングをするのか、将来のために保存しておくのか、その後の計画を立てます。非常に手間のかかる作業ではありますが、こうすることでザ・マッカランの品質を維持することができるのです」。
8. 着色ゼロ。樽の個性を活かした100%ナチュラルカラー
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ウイスキーはスピリッツカラメルによって色付けすることが許されている。「個体差をなくすため」「見栄えを良くするため」など、着色の理由はさまざまだが、ザ・マッカランでは“一切行わない”のがルールだ。
「私たちはベンチマークを持っています。例えば『ダブルカスク12年』のサンプルを見ると、樽ごとに多様な色があることがわかります。すべての樽をサンプリングし、ベンチマークに基づいて味のニュアンスはもちろん、色のバランスも考慮して、慎重に組み合わせていきます」。
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ちなみにアメリカンオークの樽で熟成するとフレッシュなフルーツ、バニラ、ときにはココナッツのような風味と、比較的明るい色合いとなる。
一方、ヨーロピアンオークは、レーズンなどのドライフルーツ、オレンジ、ジンジャー、シナモン、ナツメグなどのようなスパイス感と、深い色合いをもたらす。
これらの木材の違いに加え、それぞれの樽の個性を見極めてブレンドしていくのだ。
「この作業は非常に難しいのですが、どれだけ多くの労力をかけても、私たちが大切にしていることなのです」。
9. 8人の精鋭が集結したウイスキー・マスタリー・チーム
ザ・マッカランの最終チェックを行うのは、8人の精鋭たち「ウイスキー・マスタリー・チーム」だ。ウイスキー製造総責任者のカースティーンさんを含む、この8人全員が合格を出さないと製品化されない。一人の天才に頼るのでなく、チームの集合知がザ・マッカランのスタイルを死守しているのだ。
「チームで集まり、カラー、ノーズ(香り)、パレット(味わい)、そしてフィニッシュ(余韻)、4つの項目で636個以上ものチェックを行います。このなかで1つでも基準に満たなければ、他のサンプルを使い、納得がいくまで微調整を繰り返します」。
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ウイスキーブランドの中で8名という規模はかなり大きい方だと話すカースティーンさん。昨年はなんとチームで7万樽ものサンプルを評価したという。これは1日あたり平均194個もの樽を審査している計算になる。
「テイスティングは最終段階になってから行うので、ほとんどのチェック項目は嗅覚で判断します。そして何より重要なのは、周囲の環境をニュートラルに保つこと。評価を行うサンプルルームでは、飲食はもちろん、ハンドクリームであっても香りが強いものの使用は禁じられています。
私個人としても、仕事がひと段落するまではコーヒーは飲まないなど、それぞれが五感が研ぎ澄まれた状態を維持できるように工夫を凝らしています」。
コンディションを整えた精鋭たちが認める味、それがザ・マッカランの味わいを担保している。
10. あなたもタイムトラベラーになれる!「ザ・マッカラン エステート」
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1824年の創業以来、同じ地で蒸留を続けているザ・マッカラン エステートは、ウイスキーラバーの聖地とも言える場所だろう。一般の見学も可能だが、各スポットで抽選となるため、実際は狭き門となっている。だからこそ、その難関を突破したものには特別な体験が待っている。
約485エーカー(敷地周囲約10km)もの広大な敷地では、蒸留、熟成、ウイスキーづくりが行われている。このうち来場者は蒸溜所の見学や、敷地の背後を流れるスペイ川でのフライフィッシング、エステート内や地元で育った野菜を味わえるレストランでの食事などを体験できる。
また敷地内には1700年に建てられ、ザ・マッカランの“スピリチュアル・ホーム”として、精神的な拠り所になっている「イースターエルキーハウス」もある。
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ザ・マッカラン エステート管理責任者のレイチェル・ウォルターズさんは、このエステートに関わる人を「タイムトラベラー」と表現する。
「1840年代の地図を見ると、その生垣が今も境界線として機能していることがわかりますし、敷地内には樹齢200年、300年の木々が今も残っています。そして私たちは過去に敬意を払いながら、これからの200年先も見据えています。だからこそ“タイムトラベラー”なのです」(レイチェルさん、以下同)。
ザ・マッカラン エステート管理責任者のレイチェル・ウォルターズさん ©The Macallan
また200年後の未来のため、ここではリジェネラティブな取り組みが多く行われている。
例えばエステートには赤リスやアトランティックサーモンなどの保護種が生息しており、学術的にも重要な場所として指定されている。
「環境を守ることは動物を守るだけでなく、私たちのウイスキーづくりを守ることにも繋がります。近年の気候変動で雨が降らず、スペイ川の水が減ってしまった際に、ウイスキーづくりを約7カ月ストップさせたことがありました。そういった経験からも、環境を守ることは非常に重要で、今はエコシステムの構築にも力を入れています」。
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そして、グローバルクリエイティブディレクターのジャウマ・フェラさんも「これまでザ・マッカランのイベントでは過去を重視することが多かったのですが、200周年のイベントでは未来へのビジョン、つまり自然と共生し、守っていくというメッセージを打ち出しました」と話す。
エステートにある約110エーカーの自社大麦畑では、環境再生型農業であるリジェネラティブ・アグリカルチャーを実践し、土壌を修復・改善しながら自然環境の回復に繋げている。
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またエステート内のエネルギーはソーラーパネルで賄い、蒸溜所の燃料となる蒸気はバイオマススチームプラントで生み出している。養蜂は2年ごとに専門機関による調査も行うほど力を入れ、過去2年間で2.5kmもの生垣を植えている。
長く美味しいウイスキーを楽しむためにも、自然が作り出すロマンにも目を向けてほしい。
11. クリエイティブディレクターも認める上質を知る日本の魅力
グローバルクリエイティブディレクターのジャウマ・フェラさん ©The Macallan
クリエイティブディレクターのジャウマさんは、「日本はオーセンティック、つまり“本物”であることを非常に重要視する国だと考えています。だからこそ、私たちのクオリティを限界まで押し上げてくれる存在ですし、日本に認められる製品を作り出すことはやりがいがあります」と語る。
そして、スコットランドと日本には共通点が多いともいう。
「クラフトマンシップや熟練の技……ラグジュアリー全般が控えめでありながら、その水準は非常に高い。そこが両国の共通点だと思います。そのため日本の皆さんは、ザ・マッカランの奥深い味わいを理解し、楽しんでくれているのだと感じています」(ジャウマさん、以下同)。
12.「変わらないこと」と「進化し続けること」
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200年後の未来に向けて歩みを進めているザ・マッカラン。
その歩みの中で、ジャウマさんは「変わらないこと」と「進化し続けること」が重要だと語る。
「世界は私たちに常に『変化しろ』と促してきます。ただ時には『あえて変えないこと』が真のビジョンになることもある。変化することよりも、自分たちが何者であるかという根幹を維持し続けることのほうが難しい時もあります。だからこそ本質に忠実であり続ける必要があるのです」。
一方で、ザ・マッカランのDNAには開発と創造性が息づいているという。
「変えない努力をすると同時に、伝統をベースにした新たな開発を怠らず、自然とのつながりを保ち続ける。それこそが我々の未来へのビジョンなのです」。
◇
自然への敬意、伝統の継承、進化を恐れないスピリッツ、そして本質にこだわった味への追求。琥珀色の液体に込められたさまざまなロマンが、ザ・マッカランを最高峰のウイスキーとたらしめている。
込められたロマンに想いを馳せながらウイスキーを堪能する。そんな贅沢な時間を味わってみてはいかがだろうか。
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