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すべての写真を見る スタイリストとしてキャリアを重ねるなかで、小林さんのデニム観は、長い時間をかけてシンプルな一点へと収束していった。リジッド、つまり未加工の生デニムをはき込み、自分だけの色落ちに育てること。それ以外のアプローチは、もはや考えられないという。
「デニムって、加工されたものより、リジッドから育てていくほうが面白い。生地が体に馴染んで、自分の動きや癖が出てくる。それが定番になっていく感覚があるんですよ」。
ワードローブの基本は、ジーンズとGジャンの組み合わせ。デニム・オン・デニムを自分なりのフォーマルと位置づけ、そこに小物を加減することでTPOに対応する。
「上下デニムを合わせると、僕にとってはそれがいちばんキマった格好なんです。きれいめな革靴を履いてスカーフを巻けばフォーマル寄りになるし、スニーカーとキャップにするとカジュアルになる。小物次第で印象も変わります」。

ボトムスのシルエットは太めを好み、ゆったりとした腰回りで重心を下げるように着こなす。日々さまざまな服に触れるスタイリストの仕事が、そのバランス感覚を磨いてきた。羽織るものはデニムジャケットからカシミヤコートまで、季節によって自在に切り替えるのが流儀だ。春はシャンブレーシャツやTシャツを合わせ、コンパクトなGジャンでバランスを取ることも多い。
「若い頃は『〜っぽくしたい』という意識が強かった。今は似合うかどうか、好きかどうかだけ。デニムに関していえば、リジッドを育てていく感覚が自分に合っている」。
3年前にはデニムの製作企画にも参加し、「一度で理想の定番は完成しない」という確信を得た。ものづくりへの姿勢は今も変わらず、デニムと向き合うときも同じだ。
「作ってみてわかったのは、はいてみないとわからないことがたくさんあるということ。育てながら、少しずつ定番にしていく。その過程こそが面白いんです」。
小林 新●1978年、神奈川県生まれ。ファッション誌や広告を中心に、俳優・アーティストのスタイリングも幅広く手掛ける。取材日はパリ発のブランド「スーパー スティッチ」のデニムを上下で着用。
OCEANS5月「デニムは、人だ。」号から抜粋。さらに読むなら本誌をチェック!