新旧の技術で世界を魅了。産地の連携がKOJIMAをつくる

「僕はもう、ジーンズのことしかわからんし。この町を世界一にしたいと思っとるんです」。そう語るのは、「ジャパンブルージーンズ」が全幅の信頼を寄せる加工場、フーバルの石橋秀次さん。
デニム加工ひと筋30年以上、そのキャリアはそのまま日本のデニム加工史と重なる。

ウォッシュ加工で使われる資材。定番の軽石のほか、岡山にちなんだ備前焼のボールなどバリエーションもさまざま。
糊を落としただけのワンウォッシュから始まり、ストーンウォッシュ、ケミカルウォッシュ、そしてユーズド加工へ。かつてはヒゲの再現すら手探りだったが、現在ではレーザーで擦れ跡を焼き付ける最新技術も使いこなす。
シワを立体的にするヒゲのテンプレート。素材はスポンジ製で、硬さの異なる種類を使い分け、表情に変化をつける。
スプレーで染料や顔料を吹きつけ、エイジングを再現する「ヨゴシ」。インディゴに影響しないよう、事前に色を落とした白い部分を狙ってピンポイントで吹きつける。その量はすべて職人の目分量で決まるため、数値化は不可能。
だが、フーバルはそこで手を止めない。レーザー特有の不自然さを打ち消すため、必ず最後に職人の手作業で奥行きを刻み込む。この新旧の技術ミックスこそが、フーバルの真骨頂。
その卓越した技術は国内外で評価を受け、得意先には、カジュアルからトップメゾンまで幅広いブランドが名を連ねる。

海外ブランドとの取引において、不可欠なサステナブルへの対応も抜かりはない。現場では、水の使用量を従来の3分の1、薬品も半分以下に抑えるミスト洗浄機をヨーロッパから導入。
社屋に鎮座する巨大な浄水タンク。加工で使われた排水はここに集約されたのち、無色透明になるまで浄化する。
かつての地域課題であった排水も、無色透明になるまで徹底的に浄化して放流する。こうした姿勢は、単なるルール遵守ではなく、児島という産地を守り抜くための覚悟の表れでもある。
乾燥機から取り出したジーンズ。この後、擦り作業、洗い、乾燥のセットを繰り返すことで、リアリティのある顔立ちに仕上げる。
この町はかつて、限られたパイを工場同士が奪い合う時代もあった。しかし、幾多の荒波を越えた今、産地全体で児島ブランドを世界に発信していこう、という共通認識が育まれた。
トップが一丸となる姿勢は、現場の職人たちの意識も変えていく。その変化の先に、石橋さんのこんな想いがある。「職人を工場の歯車にはしたくない。ファンがつくようなスター職人を育てたい」。
薬剤を塗り、ブラシで擦る作業、通称「コスリ」。加工の度合いにもよるが、1日1人100本程度をこなす。
現場で黙々と手を動かす職人が、スポットライトを浴びて輝く未来。一着に命を吹き込むその手が、児島を世界のKOJIMAへと押し上げている。
OCEANS5月「デニムは、人だ。」号から抜粋。さらに読むなら本誌をチェック!