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体験を通して得ることの重要性を感じてほしい


石井さんが言うように、もとより、飯高さんと浅葉さんには絵本を作りたいという想いがあった。ただ、その想いだけでは今回の企画は成立しなかっただろう。実現した経緯について振り返ってもらった。

飯高「ちょうどニューバランスさんも同じ思いを抱いていて、そこで意気投合したのが始まりです。近年、ニューバランスさんとはさまざまな取り組みを行なってきました。そのひとつでもあるランニングシェイプスでは、テーマが“走る”だったので、その流れから今回も“走る”をキーワードとして提案させてもらいました。走ることは運動の最初の一歩みたいなところがある。それを軸にしつつ、モニュというものがいて、この子がいろんな動きをしながらどんどん話が進んでいく、みたいな展開を説明させてもらいましたね」

2025年の2月に催されたイベントでは、“Running Shapes”というワードを念頭に、走る人の動きを肉体だけでなく環境や感情といった要素を織り交ぜ表現した彼らのビジュアルが披露された。

2025年の2月に催されたイベントでは、“Running Shapes”というワードを念頭に、走る人の動きを肉体だけでなく環境や感情といった要素を織り交ぜ表現した彼らのビジュアルが披露された。


浅葉
「子供が生まれてから、さまざまな絵本を見るようになったのですが、その中で、美しさやアート性を大切にした絵本が、もっとあってもいいんじゃないかと感じるようになりました。幼い頃を思い返すと、絵本に触れたときの手触りや匂いが印象に残っている。色合いもそうですね。幼少期に得た経験は、今の自分にも少なからず影響を与えていると思っていて。今の子供たちが素敵な本を見て、それが印象に残り、何かしら将来に作用する。その一助になればいいなと」

ただ、3人とも絵本制作に関しては初めての経験ゆえ、これまでのデザインワークとは明らかな違いを感じていたのも事実。えもいわれぬプレッシャーがあったと飯高さんは笑みを浮かべる。

飯高「これまでのデザインワークと絵本制作では、まず目的が違いますよね。デザインワーク、クライアントワークの場合は前提として何か課題があり、そこに対してより良い答えを探っていくような作業。ただ、モニュはもっと人間の根源的なところを思い出しながら、感覚的に作っていくような感じだからアプローチがまったく違いますし、未来に向けて受け継がれるものと想像すると、やはり緊張感はありました。でも僕らがもの作りをするときに大事にする、“何か良いものが良い作用をして良い世の中になってほしい”という気持ちに変わりはありませんでした。作っていて物理的な大変さはありましたけど、苦しさは感じませんでしたね」

石井「未来に残っていくもの、子供たちに影響を与えるものと考えると、より丁寧にという意識が強まりました。そこが大変といえば大変でした。ただ、作品を見た子供たちがこの色合わせが好きと感じてくれたり、いろんな感覚が良くなってくれたら最高です」


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