すべてはここから始まった。家系ラーメンの原点にして頂点「家系総本山 吉村家」のチャーシュー麺 中盛。
こってり濃厚な豚骨醤油スープに、太麺が絡みつく「家系ラーメン」。無性に食べたくなる中毒性がある一方で、「塩分過多」「カロリーお化け」といったイメージから、健康診断の結果が気になるOCEANS世代にとっては“背徳の味”となっているはず。
しかし、そんな常識を覆す事実が発覚した。今回話を聞いた石原新菜先生によれば、食べ方次第で家系ラーメンは完全食になるのだとか。冬こそ絶対にやるべき「最強のトッピング」についても説明していただいた。
【写真10点】「家系ラーメンは「生姜焼き定食」に近いバランス栄養食!?」の詳細写真をチェック 話を聞いたのはこの人!
石原新菜●医師・イシハラクリニック副院長。日本内科学会会員。日本東洋医学会会員。秋田栄養短期大学特任教授。2006年3月に帝京大学医学部を卒業後、同大学病院で2年間の研修医を経て、現在はイシハラクリニックで副院長を務める。漢方医学、自然療法、食事療法を軸に、種々の病気の治療にあたっている。クリニックでの診察に加え、わかりやすい医学解説と親しみやすい人柄を生かし、講演、テレビ、ラジオ、執筆活動など多方面で活躍中。
家系ラーメンは「生姜焼き定食」に近い栄養バランス!?
吉村家、六角家と並んで家系御三家と言われた老舗「本牧家」。元は「吉村家」の2号店でその後、独立。独自の発展を遂げていった。現在は横須賀店のみ。写真はラーメン中。
――先生、単刀直入にお聞きしますが、家系ラーメンってカラダに悪いですよね? 正直、食べるときは罪悪感でいっぱいです。いえいえ、カラダに悪いというのは誤解です。私も時々、食べに行きますよ。もちろん、毎日無防備に食べるのはNGですが、家系ラーメンこそ、実は栄養バランスが取れた一食になり得るんです。
ドーナツとコーヒーで食事を済ませる人が多いですが、それなら家系ラーメンを食べた方がずっとマシです。
家系御三家として名を馳せた「六角家」。戸塚店が今年、戸塚駅直結の「トツカーナモール1F(GARDEN)」へ移転オープンした。写真は並盛のラーメン。
――先生も食べるんですか! でも、栄養バランスが良いというのはどういうことでしょう? 海苔と、ほうれん草、チャーシュー、あと味玉あたりが定番の具材ですが。まずスープでいえば、豚や鶏で取った出汁にはアミノ酸、ビタミン、コラーゲンが入っています。結構、栄養価は高いですよ。
そして、卵。アミノ酸スコア100の完全栄養食で、体内で作れない必須アミノ酸をすべて摂取できますし、チャーシュー(豚肉)は貴重なタンパク源で、疲労回復効果のあるビタミンB1も豊富です。
海苔は「海の野菜」とも呼ばれ、ミネラルやビタミンAがたっぷり含まれています。このビタミンAは、喉などの粘膜免疫(IgA抗体)を作るのを助け、風邪予防にもなるんです。そして、ほうれん草は鉄分やビタミンCが豊富ですよね。
東白楽で人気を博し、2025年3月、平塚の地に移転オープンを果たした「とらきち家」。オープン初日には4時間の行列を作った。移転前のテナントはスタッフが引き継ぎ「とらきち家 光」として営業中。写真はラーメン(中)にキクラゲ、穂先ワカメのトッピング。
――なるほど。言われてみれば、いろんな栄養がどんぶり1杯に集約されているんですね。ご飯に味噌汁、小鉢がついた「生姜焼き定食」や「鶏のてりやき定食」なんかと、栄養構成はあまり変わらないと思いますよ。ラーメン単体だと糖質と脂質に偏りがちですが、家系ラーメンはデフォルトで具材が豊富。これらが素晴らしい栄養源なんです。
―― 定食だと思えば罪悪感がかなり薄れます。さきほども言いましたが、コーヒーやドーナツを食べるより何倍も栄養価がある。適当な食事で済ませるくらいなら、家系ラーメンに行くことを医師としてもおすすめします。ただ、条件があるのでしっかりポイントは押さえてくださいね。
2025年5月に新橋でリニューアルオープンした「家系ラーメン 王道乃印」のチャーシューメン(中)。その名が示すとおり「王道家」系列。
条件あり! 守るべき「3つの鉄則」
――では早速、条件を教えてください!私も実践している3つの鉄則を紹介しますね。
① スープは「飲み干さない」スープには栄養もありますが、塩分と脂質が多いのは事実。飲み干すとカロリーが跳ね上がって「カロリーお化け」になるし、塩分の摂り過ぎはむくみや高血圧、その他の生活習慣病につながります。麺に絡む分だけでも味は楽しめるので、スープは最低でも2〜3割残すことを心がけましょう。
② 脂(鶏油)は「少なめ」でオーダー背脂などの脂は美味しいですが、カロリーの元凶。オーダー時に「脂少なめ」にするだけで、罪悪感はグッと減ります。味は「普通」でOKです。
③ 麺は「硬め」でよく噛むこと家系ラーメンは長居することが難しいため、勢いでズルズルといきがちですが、早食いは血糖値の急上昇(スパイク)を招き、食後の強烈な眠気の原因にもなります。オーダーは「麺硬め」にして、一口最低10回、理想は30回噛むこと。咀嚼することで満腹中枢が刺激され、食べ過ぎ防止にもなりますよ。
④ 食べる時間帯は昼!お酒を飲んだ後の〆でラーメンを食べて、そのまま寝る。これは最悪です。そのまま脂肪として蓄積されるし、消化吸収する内臓への負担も大きいので。家系ラーメンを食べるなら、基礎代謝が高いお昼がベストでしょう。
横浜市中区「黄金家」の中盛チャーシューメン。吉村家直系1号店として屈指の人気を誇る「杉田家」出身とされている。
冬こそ「生姜」マシマシで! “摂るサウナ”効果とは?
―― ほかに、おすすめの食べ方はありますか? 卓上調味料も気になります。この冬、私が特に推奨したいのが「生姜」の活用です。家系ラーメンの店には、刻み生姜やおろし生姜が置いてあることが多いですよね? あれをたっぷりと入れてください。
―― ニンニクではなく、生姜ですか?もちろんニンニクもスタミナがつきますが、冬の体調管理には生姜が最強なんです。現代人は昔に比べて平熱が下がっており、低体温の人が増えています。体温が1度下がると免疫力は30%、代謝は13%も落ちると言われています。そこで役立つのが生姜です。
―― 具体的にどんな効果があるんでしょうか?生姜に含まれる「ジンゲロール」という成分は、熱いスープで加熱されることで「ショウガオール」という成分に変化します。これがすごいんです。
ショウガオールには脂肪を燃焼させ、体の深部体温を上げる働きがあります。つまり、熱々のラーメンに入れることで、体の芯から熱を生み出す「暖房器具」のような役割を果たしてくれるんですよ。
―― ラーメンに入れるだけで成分が変わるんですね!そうなんです。食べるとすぐに血流が良くなり、代謝がアップします。汗もかきやすくなるので、まさに”摂るサウナ”状態。
生姜の温め効果は約3時間続くと言われています。寒い冬のランチに家系ラーメンを食べ、生姜をたっぷり入れれば、午後のデスクワーク中もポカポカして代謝が高い状態をキープできますよ。
また、ショウガオールは便通改善も期待できるので、便秘になりやすい冬にはピッタリですよ。
「家系ラーメン 大輝家」日吉店のラーメン(並)。本店は蒲田で、店主の出身店は志田家とされている。
―― それは新発見! でも寒い季節に体が生姜を求めるのは自然なことなんですね。漢方では、生姜は「気剤(きざい)」とも呼ばれ、気の巡りを良くする生薬として使われています。体が冷えていると気分も落ち込みがちですが、生姜で体を温め、気の巡りを良くすることで、鬱々とした気分を晴らす効果も期待できます。
寿司屋に置いてあるガリと同じで、生姜には強い殺菌作用や抗ウイルス作用もあるので、風邪やインフルエンザの予防にもうってつけです。
―― 代謝アップ、メンタルケア、風邪予防……。生姜マシマシ、やらない手はないですね。味が変わるのが気になる場合は、最後にスープに入れて味変として楽しむのもアリですが、代謝のエンジンをかけるなら最初からガツンと入れるのがおすすめです。
―― 味変が健康につながるなら、一石二鳥です。まぁでも、美味しく食べることがいちばんの健康法ですから、自分好みの「カラダにいいトッピング」を見つけてカスタマイズするのも家系ラーメンの醍醐味だと思います。
2025年1月、三田にオープンした「大輝家直系家系ラーメン 大総家」のラーメン(中)。前述した「大輝家」の直系店。
結論:週1〜2回の「ご褒美ラーメン」なら罪悪感ゼロ
―― これからは自信を持って家系ラーメンを楽しめそうです。運動もせずに毎日ラーメン、というのは流石にNGですが、週に1〜2回、お昼に食べる分には全く問題ありません。私も食べたくなってきました(笑)。
「硬め・脂少なめ」でオーダーし、野菜から食べて、麺はよく噛んで、生姜はたっぷり入れる。そしてスープは少し残す。このルールさえ守れば、疲れた大人のカラダを癒す「完全食」になります。寒さが厳しくなるこれからの季節、ぜひ美味しく代謝を上げてみてください。
【家系ラーメン・罪悪感ゼロのオーダー法まとめ】
● 時間: ランチタイム一択
● コール: 「麺硬め・味普通・脂少なめ」※味薄めだとなお良し
● 食べ方: 海苔やほうれん草から食べ、よく噛む。スープは残す。ご飯(ライス)の追加は我慢!
● トッピング: 生姜をたっぷり入れる(代謝&免疫アップ)
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これらのことを守れば、家系ラーメンは疲れた大人のカラダを癒やす「完全食」になる。寒さが厳しくなるこれからの季節、生姜マシマシ、熱々の一杯で、内側から整えてみてはいかがだろうか。
金沢文庫の住宅街にある「金八家」。六角家の姉妹店。金八ラーメンの中盛り。