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名店① 盛岡を代表する超人気店「中華そば 弥太郎」


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まずご紹介するのは、「中華そば 弥太郎」。オープンは2010年4月と比較的新しいが、2019年3月に移転も経験。今では、押しも押されもしない大行列店へと上り詰めた、盛岡を代表する「中華そば」の名店だ。

店舗の場所は、厨川駅(IGRいわて銀河鉄道)から徒歩で約10分。駅から、「福田パン」のみたけ店、盛岡中央高等学校がある通りをひたすら直進すると、やがて落ち着いた外観の店舗が忽然と右手に姿を現す。それが「弥太郎」だ。

営業開始時間は11時からで、営業時間は昼間のみ。上述したとおり、盛岡を代表する超人気店のひとつなので、足を運ばれる際には、開店の15分前には現地に辿り着いておきたいところだ。
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同店が提供するレギュラー麺メニューは、「中華そば」、「塩ラーメン」、「味噌ラーメン」、及び、屋号を品名に冠した辛系の「弥太郎そば」など。「一丁目(並み)」から「五丁目(激辛)」まで、五段階から辛さが選べる「弥太郎そば」も、多くの固定ファンを擁する人気商品だが、初めて訪問されるのであればやはりメニューリストの筆頭を飾る「中華そば」が鉄板だろう。同店ではすべての品を「こってり背脂入り」にすることが可能であり、個人的には「こってり」指定がお薦めだ。

注文から品が卓上に供されるまでの時間は5分弱。店舗構造上、客席から厨房が見えない造りとなっているが、厨房内では一糸の乱れもないオペレーションが繰り広げられているものと容易に想像できる。



さて、卓上に供された「中華そば(こってり)」は、美しい褐色に染め抜かれたスープの合間から波打つ自家製縮れ麺の姿が視認できる、均整の極致と呼ぶに相応しいビジュアル。私は今回、数年前に食したこの1杯の味が忘れられず再訪を果たしたが、前回と比べスープ表層に浮かぶ背脂が増量されるなど、さらなる改善の跡が見受けられる点も安心感を誘う。

早速、スープをひとすすり。凛と煌めきを放つ煮干しの滋味が体液の如く身体の芯へと溶け込み、味嗅覚を圧倒。縮れ麺は、同店ならではの低加水仕様。メリハリ豊かな麺肌が唇を軽やかに撫で、瞬時に快楽の坩堝へと誘う。改めて、「弥太郎」の1杯が、盛岡を代表する「中華そば」であることを再確認する結果と相成った。

IGRいわて銀河鉄道の時刻表をじっくりと読み解き、是非、万全の態勢で足を運んでもらいたい。
中華そば 弥太郎
住所:岩手県盛岡市みたけ4-28
営業:11:00〜L.O.14:40 土日祝は〜L.O.15:00
定休:不定休

名店② 盛岡の味を守り続ける老舗「屋台の中華そば 橋龍」



続いてご紹介するのは、「屋台の中華そば 橋龍」。

場所は、「弥太郎」からさらに歩を進めた先で、厨川駅から徒歩約20分強。私は「弥太郎」からの連食だったので、さほどの距離感は抱かなかったが、駅から直接「橋龍」へとアクセスしようとすれば、相応の時間を要する。なので、同店を訪問される際には、「弥太郎」との連食を強く薦めたい。

そんな「橋龍」、2025年1月にその歴史に幕を下ろすとの噂が流れたが、先代が退き、同年2月から2代目が跡を継ぐことで、晴れて閉店を回避。昔ながらの「中華そば」を実直に提供する同店は、特に地元からの根強い支持を獲得する人気店。経営体制こそ変わったものの、盛岡の味を守り続ける優良店が無事に存続の運びとなり、私もホッと胸を撫で下ろした次第だ。

同店の外観は、昔ながらの食堂然とした年季の入ったもの。屋号に刻まれた「屋台の中華そば」の7文字が、「橋龍」が屋台をルーツとする純然たる地元密着型店舗であることを雄弁に物語る。



提供する麺メニューは、看板商品である「屋台の中華そば」を筆頭に、「屋台のワンタン麺」、「関西青ネギラーメン」、「新潟味噌ラーメン」、「かけ中華(ネギのみ)」など。 

「関西」や「新潟」を冠した商品まで擁するラインナップの独創性に、「どのラーメンを食べようか」と、思わず目移りしそうになったが、私は、トッピングの干渉を受けることなく麺とスープが存分に堪能できる「かけ中華」を注文。価格は、なんと500円! この物価高のご時世にワンコインで注文できることも同品を選択する強い動機となった。



カウンター席に腰を掛け、完成を待つこと5分弱。恭しく卓上に供された「かけ中華」は、まさに「盛岡中華」の王道とでも称すべき1杯。

味の中心に比内地鶏をドッシリと据え、豚骨・煮干し・昆布・香味野菜等の素材を優しく寄り添わせたスープは、すする度に天然素材の淡い滋味が縦横無尽に迸り、味蕾を心地良く刺激。舌が素材の滋味に慣れた頃合いに、徐々に輪郭を現すカエシの仄かな甘みも箸を持つ手に小気味良いリズムを刻む。

絹糸のごとく繊細で毅然と己を主張する麺の出来映えからも、老舗の貫録がほの見える。なるほど、確かにこれは後世にまで残したい名品だ。
屋台の中華そば 橋龍
住所:岩手県盛岡市みたけ6-1-29
営業:10:30〜16:00
定休:水曜

名店③ 盛岡ラーメンシーンの先端を行く「こまつ中華蕎麦」



次にご紹介するのは、「こまつ中華蕎麦」。オープンは2025年6月。青山駅(IGRいわて銀河鉄道)から徒歩8分程度の路地裏に佇む新店にして、今、盛岡で最も熱い店舗のひとつだ。

同店を紹介するに当たり、必ず言及しておかなければならない情報がある。それは、店主が埼玉県朝霞市にある実力店「中華蕎麦 瑞山」の出身であることだ。つまり、一都三県で培った最新のラーメン創作技術をここ盛岡の地へと持ち込んだ、盛岡ラーメンシーンの最新の潮流を体現する店舗のひとつが、この「こまつ中華蕎麦」なのだ。

埼玉の実力店の系譜に連なる味が、はるか遠き北東北の地へと持ち込まれた。これは、盛岡ラーメンシーンの機運をさらに上昇させる、弾みのひと押しとなるに違いない。



そんな「こまつ中華蕎麦」が紡ぎ出すレギュラー麺メニューは、「しおそば」、「中華そば」、「つけ麺」、「白湯そば」、「麻婆麺」など、多種多様。いずれの品も、完成度が高いと評判だが、初訪問であればやはり券売機の筆頭を飾る「しおそば」を薦めたい。



鶏の雅やかなうま味を出汁と香味油の双方に溶け込ませ、塩ダレの甘美な香りをそっと寄り添わせた琥珀色のスープはすすり上げた瞬間、鳥肌が立つほどの洗練を示す。

スープの中で行儀良く畳まれた真白きストレート麺の麺肌の艶やかさも特筆に値する。麺とスープの相性が秀逸であることも、もはや自明の域だ。

食べ始めからスープを飲み干すまでの間、身体は盛岡に在りながら、心は完全に数百km離れた埼玉の彼方へと飛んでいた。盛岡の地で、一都三県の「今」の風を感じたい。そんなニーズに見事に応えてくれる、全国レベルの淡麗ラーメンだ。
こまつ中華蕎麦
住所:岩手県盛岡市青山町3-20-16
営業:11:00〜L.O.14:30
定休:火曜
Instagram@komatsuchu_kasoba

名店④ 昼は中華そば、夜はイタリアンを提供!「中華そば volare」



コラムの締めを飾るのは、「中華そば volare(ヴォラーレ)」。

オープンは、2021年8月。同店も、青山駅から徒歩8分程度の場所に佇むが、駅からの方角は「こまつ中華蕎麦」とは逆。

上堂三丁目交差点の近傍に佇む、実家感のある店構えが印象深い店舗だ。あまりにも実家然とし過ぎて店舗の在処が分かりにくいが、深緑色の生地に白地で描かれた暖簾がランドマークとなるだろう。

引き戸をガラリと開くと視界に飛び込む店内も、朴訥で家庭的な空間。外界の喧騒から隔絶された静かな時間が流れ、ゆっくりと食事を楽しむことができる。



入口近くに小さな券売機があり、「中華そば」、「鶏中華」、「煮干し中華」、「味噌中華」等の汁そばに加え、「スパイスまぜそば」、「カルボ」の2種類の「汁なし」を提供。今回私は「カルボ」を注文させていただいた。

「カルボ」は、読んで字の如く、パスタの名品「カルボナーラ」を、巧みなギミックにより中華そばの世界へと落とし込んだ意欲作。うま味に富む卵黄と薫香麗しいベーコンが、香り豊かなチーズの仲立ちを経て、際限なき美味を演出する。



フィットチーネのような平打ち麺も、芳醇なソースを存分に掬い上げ、力強く口元へと運び込む。ひとすすりでシャワーの如く降り注ぐ香味の雨に口内が幸福感で満たされ、食べ終えたあとには甘美な余韻の海が広がるのみだ。

一流のラーメンとイタリアンの双方を、ひとつの丼で味わえる。そんな、ほかに代えがたき満足感が得られる貴重な1杯。

昼は「中華そば」、夜は「イタリアン」という異なる2つの顔を持つ「volare」。「盛岡中華」の技法とイタリアンの技術の融合は、必ずや地域に新しい風を吹き込み、ラーメンの楽しみ方を広げるに違いない。

食べ歩きの旅の行程にアクセントを添える。そんな意味合いにおいても、「volare」は、押さえておいて決して損はしないだろう。
中華そば volare
住所:岩手県盛岡市上堂3-5-16
営業:11:00〜14:30 土日祝は〜15:00
定休:水曜・不定休
Instagrm@volare_8888

※メニューの価格は訪問時のものになります。

田中一明=写真・文 池田裕美=編集

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