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モードへの扉を開いた細身の“ロクロク”


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ファッション業界でキャリアを重ねていくうちに視野も広がり、着こなしやアイテム選びにおける選択肢も増えていった。この一本からはそんな彼の成長が垣間見える。

「501の“66(ロクロク)”の前期ですね。当時、ベルベルジンのスタッフさんがアイテムの仕分けをしていた本店横の狭いスペースがあって、そこで隔週、社長の山田(和俊)さんが見切り品を売っていました。そこで購入したんです。これがまたすごい大放出価格で、なんと3000円です」。



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他のものと比べサイズがタイトだけにジーンズらしい荒々しさはさほど感じられず、デザイナーズブランドとの相性もすこぶる良かったと回想する。

「これ、レディースサイズっぽくて、27インチぐらいだと思います。ロクロクだ、ビッグEだと言っても、レディースサイズは当時そこまで価値がなかった。だから、早々に見切りをつけたモデルだと思うんですよ。

でも、その頃の僕のスタイルにこのアイスブルーのリーバイスが思いのほかハマって。よくデザイナーズのトップスにブーツと合わせたり、ジャケットスタイルやハイゲージのニットにもちょうどよかった。これまでアメカジ一辺倒でしたけど、この一本がデザイナーズを着る布石になったように思います」。

40代が選ぶ、今の気分に寄り添うブラックデニム



ブルー、ブルーと続いていたところに今度はブラック。しかもユーロリーバイスである。こちらは最近の心情の変化を如実に表したアイテムだ。



「これは去年、学芸大学にあるマムニックという古着店で買ったモデルです。スタイリストの馬場さんのお店で働いている方がやられていて、全部ヨーロッパ、というか一部をのぞきほぼイギリスの古着です。

大人になり、だんだん似合う服と似合わない服が出てきたと実感することが増えました。20歳の時に似合っていた服が急に着られなくなった。なんだかブラックの方が落ち着くな〜と思うようになったんです」。



「最初は逃げかなとも思ったんですけど、ビームスで働いていたときに先輩から言われた言葉をふと思い出したんです。『洋服は色味とサイズバランスがすべて。背伸びするのはいいけれど、自分に似合うものを見つけた方が早い』と。だとすると、黒に逃げたのではなく今の自分に気分に寄り添う色なんだなと自覚しました」。

パンツ=リーバイス アウター=サイズ ニット=ブランワイエム シューズ=アール ニットキャップ=サブライムロー

パンツ=リーバイス アウター=サイズ ニット=ブランワイエム シューズ=アール ニットキャップ=サブライムロー


「ブラックデニムを合わせると重たく見えちゃうので、トップスに明るめの色だったり軽めの色をもってきたりするようにしています。ジャストサイズのブラックデニムに細身のシューズだとちょっと艶っぽくなるので、そこだけはボテッとしたものを選びました」。




「やっぱり40歳になって思ったのはトラッドってすごい言葉だなと。何年も残り続けるって大変ですから。なんで残っているのかって純粋に考えたら、やっぱり圧倒的なブランドが持つ力ですよね。迷ったらこれっていう選択肢の中に今もなお入るのは素晴らしいと思います」。

トップスやシューズ、小物などなど。時代の移ろいとともに、その都度気分も変わっていくものだ。ただ、久戸瀬さんの中でリーバイスがジーンズの軸であることに変わりはない。

「きっとこれからも穿き続けると思います」。その言葉が、リーバイスの偉大さを物語っている。

佐藤ゆたか=写真 菊地 亮=取材・文

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