古い地図を前に並ぶ石膏の群れ。ここ何年かはいいものを見つければ考えることなく買っている。もう何体あるのか数えるのはやめた。現在は半分はパリに、半分はローマに暮らしている。
ラムダン・トゥアミの「欲しいものは、だいたい買えるけど。」とは…… ▶︎
すべての写真を見る 世の中には、なぜか芸術に取り憑かれるしかない人生がある。おれもその一人で、気がつけばローマに放り込まれていた。
石と像の死骸だらけの街。ローマは単なる住む場所ではなく、勝手にこちらの心に入り込んでくる。オベリスクの下で退屈は死に、修道院じゃ沈黙がしゃべり出す。路地の角ごとに、大理石の幽霊みたいな美が飛び出してくる。
石膏像に取り憑かれたのはロンドンのサー・ジョン・ソーンズ美術館をふらっと覗いたときから。なんでこんなに好きなのかは説明できない。ただ美しいと思い、欲しいと思った。それだけだ。
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