「地方ラーメン激戦県」とは……
ラーメン官僚こと、かずあっきぃさんが全国の絶品ラーメン店を紹介する本連載。食欲の秋を迎えたいま、官僚が推すのは、都内近郊からもアクセスのよい群馬県高崎市の4軒だ!
【写真15点】「高崎市のラーメンシーンは、今が最旬 」の詳細を写真でチェック
案内人はこの方!
かずあっきぃ(通称・ラーメン官僚)●本職は官僚。大学時よりラーメンの食べ歩きを始める。「COWCOWのまるまるラーメン最前線」(BSフジ)、「食楽web」をはじめ、あらゆるメディアでラーメン連載を担当している。年間700杯食べる秘訣は「ラーメン以外を食べないこと」。
ジャンルが幅広い高崎のラーメンシーン
今回のコラムでは、群馬県高崎市のラーメンシーンをご紹介する。
高崎市は、北関東3県(群馬県、栃木県、茨城県)屈指の交通の要衝。とりわけ、同市の玄関口である高崎駅は、新幹線2路線(上越新幹線・北陸新幹線)、在来線6路線(高崎線・上越線・信越本線・八高線・両毛線・吾妻線)、上信電鉄の計9路線が乗り入れる県内最大のターミナル駅だ。
関東地方から群馬県以遠の各地へと旅行に出掛ける場合においても、高崎駅を経由する機会は非常に多い。長野県、北陸方面から関東へと戻る場合も、その流れは変わらない。多くの旅人が、高崎駅で気持ちをスイッチさせる瞬間を体験しているのではないか。私も、高崎駅で切り替わりの瞬間を何度も味わってきた。
また、高崎市は1都3県、特に埼玉県と近接しており、関東在住者にとっては日常の延長線上にある都市だと言える。関東各方面から新幹線に乗車すれば、それこそ瞬く間、例えば大宮駅からだと30分弱で高崎駅に到着するため、費用の節約を兼ねて在来線でアクセスする人も多い。同じ北関東3県の都市でいえば、栃木県宇都宮市に近い立ち位置だと言えるだろう。

当然のことながら、高崎市のこのような地理的条件は、ラーメンシーンにも色濃く投影される。包み隠さず本音を告白すると、ほかの地方と比較して、高崎のラーメンシーンを網羅的に描き切ることは極めて難しい。少なくとも私はこのコラムを書き上げるまで、何度も試行錯誤した。
高崎ラーメンシーンの最大の特徴は、関東圏との地理的障壁が低く、1都3県の流行・技術がスピーディーに流入することだ。このため、淡麗・ガッツリ系・純豚骨から鶏白湯にいたるまで、さまざまなジャンルの味が幅広く展開されている。「支那そば なかじま」、「自家製麺 くろ松」、「中華蕎麦 鳴神食堂」のような、都内の名店での修業を経て、地元・高崎で独立開業し、実力店として認知されるにいたった店舗も多い。
さながら、1都3県のラーメンシーンの「縮図」のような様相を呈しており、「高崎のラーメンの傾向はこうだ」と、ひと言で表現できる共通項がないのだ。
ほかの多くの地方都市のような、いわゆる“ご当地麺”が存在しないことも、高崎のラーメンシーンを説明困難なものとする大きな要因のひとつだ。もちろん、高崎市にも古くから根付く老舗が数多く存在するが、それらの店舗が手掛ける味も、必ずしも一様ではない。
他方、視点をラーメンマニア目線へと移せば、提供するラーメンがバリエーションに富むことは、訪問店の選択肢の幅広さに直結する。最新の潮流を巧みに採り入れた全国区クラスの実力店が複数存在することも、大きな魅力だ。誤解を恐れず申し上げれば、「地方らしさこそ希薄だが、マニアを自認するなら避けては通れない必食店が多い」。これが、マニアにとっての高崎の位置付けだ。
高崎ラーメンシーンにおける実力店のひとつ、「中華蕎麦 鳴神食堂」の中華蕎麦。
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