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すべての写真を見る自国ドイツでの生産にこだわり、いまだに多くの工程を職人が担うクラフツマンシップ。人々の足を機能と品質に基づき支えてきた250年のヒストリー。
「ビルケンシュトックは裸足に次ぐ、最高の選択」。そう話すブランドCEOのオリバー・ライヒェルトさんは、2023年、上場を発表したNY証券取引所でもビルケンを履いていた。
profile
オリバー・ライヒェルト(Oliver Reichert)さん。テレビ業界からビルケンシュトックへと転籍した異色の経歴の持ち主。2012年から、ビルケンシュトックグループの最高経営責任者として陣頭指揮を執る。足のサイズは46(30cm!)。
「裸足の次に贅沢なのはビルケンです」

250年の歴史で積み上げてきたクラフツマンシップこそビルケンシュトックの財産。そのため多くの工程に今も手作業が入る。
ロールス・ロイス級の心地良さ。ビルケンシュトックのフットベッドをこう評してもきっと怒られまい。
ナチュラルな硬さと通気性を保つためサイズの異なるコルク粒をベイクした独自のフットベッドは、商標登録されて今年で100年が経つ。


「柔らかく自然な地面を裸足で歩くことが足にはベスト。でも、生活圏のほとんどがコンクリートを占める現代の街で、それは無理。ではどうするか? ビルケンシュトックを履けばいいんです」。
CEOのオリバーさんはブランドを上場させた際、NY証券取引所に「アリゾナ」を履いて行った。ブランドを代表する人気モデルであり、彼の人生初ビルケンである。
「パフォーマンスではなく、本質を追求した結果です」。
本国ドイツには6つの工場があるが、全製品の要であるフットベッドはゲルリッツの工場で一元管理。ミュンヘンにあるオフィスには、貴重なアーカイブも管理されている。
Made in Germanyの伝統にこだわるビルケンシュトックは故郷に6つのファクトリーを持ち、製造工程の効率化は進めるものの、すべてをオートメーション化することはない。
「ファンクション、クオリティ、ヘリテージ。ブランドが大切にする3つのコアバリューを守るには、あらゆる工程で人の手と目が介在する必要があります。我々はファッションブランドではなくフットベッド・カンパニーですから」。



1774年から引き継がれるクラフツマンシップに支えられた唯一無二のプロダクト。それに惹かれ、最近はコラボレーションのニュースも事欠かない。
ラグジュアリー系ならディオール、ストリート界隈ではキス、さらには靴が本業のマノロ・ブラニクまで、その幅広さもまたブランドの強さを物語る。


ウェルネス、クラフツマンシップ、ストーリー。そしてジェンダーレスでの共感。OCEANSが考えるラグジュアリーの条件を漏れなく満たすビルケンシュトックとどう付き合うか。
オリバーさんに聞くと素敵な答えが返ってきた。「水を飲むくらい自然に履いてもらえたら」。ラグジュアリーの本質と理想の関係が築けそうだ。
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