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描くこと、眺めること。そのどちらにも、心の居場所がある


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――磯村さんは子供の頃からアートに親しんでいたと伺いました。


磯村 家族で旅行に行くと、美術館に立ち寄るのがいつもの流れだったので、小学校低学年の頃から絵に触れてきました。両親がアートを特別なことじゃなくて“日常の一部”として見せてくれていたんですよね。だから上京してからも美術館には頻繁に通っていました。

コロナ禍の少し前から自分でも絵を描き始めて、さらにアートが生活と身近なものになっていきました。
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――絵を描きたくなるのは、どんな瞬間ですか?

磯村 俳優って台本のある役を演じる仕事なので、どうしても受け身の表現なんですよね。それに対して絵を描くことは、ゼロから自分の内側を引っ張り出して表現する能動的な作業。自分の考えや感情、社会への想いをそのまま形にできる、その過程がすごく心地良いんです。

テーマは多様で、頭で考えるというより気付いたら手が動く感覚ですかね。



――最近ではご自宅にアート作品を飾っているそうですね。日常にアートがあることで、どんな変化を感じますか?

磯村 何より帰宅して部屋に入った瞬間に、その絵が迎えてくれる感じがするのが良いですね。自分が心惹かれて選んだ一枚ですから、眺めているだけで自然と気持ちが整うというか。初めて作品を迎え入れたときは、四六時中その絵を眺めていました。ご飯も、あえてその前で食べたりして(笑)。「今日はどう見えるかな?」って。

あと、ぼんやりと見ているだけでも、不思議と自分の内側が整理されていくんですよね。絵の表情が日々変わって見えるように、自分の感情も少しずつ変化しているんだな、とか。アートは心の呼吸を深くしてくれる存在なんです。



――興味を持つアートのジャンルに、傾向はありますか?

磯村 あまりジャンルには縛られていないですね。抽象画も好きですし、印象派も、現代アートの立体作品なんかにも惹かれます。最近では、日本の古典美術にも興味が出てきて……。多分、まだ自分の中で“これだ”と決め込まず、広く吸収しているフェーズなのかと。

今は、「新・美の巨人たち」という美術の番組のナレーションも担当しています。そこで、さまざまな作家や作品と出逢えることも楽しいですね。



――アートも俳優業も“表現”という点ではつながっていると思います。今後、アートとはどのように関わっていきたいですか?

磯村 アートの世界って、知れば知るほど終わりがないんですよね。何百年も前の作品に心を揺さぶられたり、昨日生まれた作品に未来を感じたりする。

僕自身、俳優としても“こうあるべき”みたいな固定観念には縛られたくないタイプ。アートに触れていると、「表現ってもっと自由でいいんだ」と気づかされる瞬間が多いんです。今後も、ジャンルや既成概念を超えて、自分なりに表現の余白を見つけていけたら良いですね。
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