オートバックス店長とよしもと芸人の関係

サルゴリラのふたりが出演する劇場のひとつ「大宮ラクーンよしもと劇場」。いまでこそ人気芸人の多くが出演する花の舞台だが、2014年のオープンからしばらくは日の当たらない陰の存在だった。
「マヂカルラブリーやすゑひろがりずといった“大宮セブン”の初期メンバーが、まだ誰も世に出ていない時代。大宮のよしもと劇場は、売れない芸人が左遷される場所というイメージがあったんです。
だから、大宮から売れてやろうと芸人自身が地域で広報活動を始めて、そのなかで出会ったのが、スーパーオートバックス大宮バイパス店。いまでは、劇場に出るよしもと芸人のほとんどがお世話になっています。ここの店長は、照明や音響、客席まである『お笑いバックスシアター』っていう劇場を店内に作っちゃったほど、お笑い好きなんですよ」。

2020年からのコロナ禍では、この劇場を拠点にお笑いライブを配信。それがきっかけとなり、知名度を得た芸人たちが“恩返し”のつもりで次々と車を購入する、そんな関係性が生まれたのだという。
「ピン芸人のヒロユキMc-Ⅱ(元GAG)や囲碁将棋の文田を筆頭に、大宮セブンのメンバーがここで車を買うようになりました。トットの多田もそうだし、ジェラードンに関しては2人とも。その流れで僕も話をいただいたという感じです」。
考えたこともなかったカーライフが射程に

赤羽さんが初めてのマイカーとして迎え入れたのは、2014年製の日産「エクストレイル」。出会いは、芸人仲間と店長で構成されるLINEグループに届いた一本の通知で、「お買い得な車がある」と紹介されたことだった。
「このLINEが来るまで、本当に車を買うなんて想像もしていなかったし、興味もなかったんです。でも、いい状態の日産エクストレイルが入ったという連絡が届いて、金額を見ると僕の手が届く範囲。
え? もしかしたらリアルに車が買えるかも……?って思ったら、車のある生活が急に現実味を帯びてきて。居ても立っても居られなくなって、一気に火がついた感じでした」。
マスカット味の電子タバコのほんのり甘い香りが漂う車内。
いの一番に名乗りを挙げた赤羽さんにエクストレイルは渡ることになり、その後は店長とのやり取りを重ねて準備が進んだ。そして真夏の7月下旬、ついに、唯一無二の一台が赤羽さんのもとへ納車されたのだ。
「全塗装されたポルシェ91のアークスティックグレーのような色と、かっこいいタイヤが気に入ってます。細かいことはわかりませんが、内装も新しくなってるし、かっこよくバージョンアップしてもらってます。フロントグリルはマットブラックを一面に施してもらって、それから……」。

店長の厚意で付けてくれたという「KOC」のプレート。KING OF CARとKING OF CONTEをかけた王者だけに送られる刻印。
フロントフェンダーに貼られたのはオリジナルの装飾「KOC」。2023年にキングオブコント王者に輝いた、サルゴリラへの祝辞を込めた輝かしいプレートである。
「世界でたった1台の車です。外装も内装も至れり尽くせりなのに、店長からのサービスで価格は200万円を切りました。本当にありがたいことです」。
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