ショービジネスに携わる者として“魅せる”とは?

清潔感あるベージュのセットアップで程良くドレスアップ。肩の力を抜いて“着流す”スタイリングに、由緒あるダイバーズウォッチが寄り添う。ホワイトシルバーダイヤルがカラーリンクし、ブルーセラミックスのベゼルは品のいいアクセントになっている。
その一方で、我々がよく知る“岩田剛典”は、ステージを所狭しと動き回るパフォーマーであり、作詞なども手掛けるアーティストであり、見るものの心を震わせるアクターでもある。まさに八面六臂の活躍について、どのように相対しているのだろうか。
「ショービジネスに携わる者としては、観客の皆様に自分の評価を決めていただくという点には、変わりはありません。なので、いずれも今できる精一杯を注いでいます。
ただ、違いはありますよね。アーティスト活動のなかで僕が大事にしているもののひとつに、ライブがあります。僕を応援してくれるファンの方に、今の“岩田剛典”をきちんと届けること。それを重視しています。ファンの皆さんの生活が、自分のライブを通じて、少しでもよくなってもらえることが、大きな意味で社会貢献に繋がると信じています」。
一方で、アクターとしての自分は不思議な存在だと語る。

「俳優は、俗に“俳優部”と言われるように、作品の一部。ファンの方のために演じるのではなく、作品をよりよくするコマのひとつであるという認識です。自分の思いよりも、あくまで監督やプロデューサーが生み出す作品の世界観を、自分のフィルターを通して皆さんに見ていただくことを優先すべきというスタンス。自分の演技に感動していただいたとしても、それは作品の一部としてのことなのだなと。そのなかに、素の自分の言葉は入っていないので、すごく不思議な感覚があるんです」。
俳優としての自分をクールに俯瞰する岩田さん。パフォーマーとしての熱い振る舞いとは異なり、クレバーな姿をも見せてくれる。こうした二面性もまた魅力なのだ。

クリエイターとしても、エンターテイナーとしても、共通して「自分のフィルター」という言葉が発せられた。ここに“岩田剛典”の「らしさ」を感じた。
「いつか自分のパフォーマンスにもリターンがあるかもしれないと思って始めたもの作りですが、実際にやってみて感じたのは、自分自身が商品になるんだなという思いです。
つまり、どんな人間が作っているのか、あるいは演じているのか、というプレゼンテーションが大事になる。プロダクトやパフォーマンス、演技から感じていただく“自分のフィルター”というのは、まさに“岩田剛典”そのものとなるわけですからね」。
あらゆる「仕事」を通じて自らを客観視する岩田さん。その鋭い視点で“魅せ”続けてきたことが、唯一無二な存在ともいえる今の彼を作り上げたといってもいいだろう。
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