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2025.09.12

からだ

【気温差10℃以上に要警戒】“ヒートショック“は夏のほうが高リスク!? 脳梗塞を防ぐ原因と対策


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ヒートショックというと寒い冬を連想させるが、実は夏もリスクが高く、猛暑日が続くほど危険が増すという。それゆえ、脳梗塞の発症数はこの季節がいちばん多く、気温が上がり続ける昨今においては、見過ごせない問題となっている。

夏のヒートショックのキーワードは「脱水」と「温度差」。この重要テーマに知見を持つ内科医の工藤孝文先生に、実践的な対策を伺った。

 【写真11点】「“ヒートショック“は夏のほうが高リスク!? 脳梗塞を防ぐ原因と対策」の詳細を写真でチェック
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案内人はこの方!
工藤孝文●糖尿病内科医・東洋医学医。自身のクリニック「みやま市工藤内科」で診療を行いつつ、全国で血糖値と肥満の関連などについて講演会を行っている。専門は、糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病、漢方治療・ダイエット治療など。NHK「あさイチ」「チコちゃんに叱られる!」「あしたが変わるトリセツショー」などテレビ番組に多数出演。医学的根拠に基づいた健康情報を伝えている。

工藤孝文●糖尿病内科医・東洋医学医。全国で血糖値と肥満の関連などについて講演会を行っている。専門は、糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病、漢方治療・ダイエット治療など。NHK「あさイチ」「チコちゃんに叱られる!」「あしたが変わるトリセツショー」などテレビ番組に多数出演。医学的根拠に基づいた健康情報を伝えている。



夏のヒートショックで脳梗塞になる理由



──「ヒートショック」とはどんな現象なのか、改めて教えてください。

ヒートショックは、軽度であれば頭痛やめまい、失神など。重度になると、心筋梗塞や脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)などの血管疾患を引き起こします。どれも原因は、血管の収縮や拡張による「血圧の乱高下」です。

冬のヒートショックは広く知られていますが、夏も次に高いリスクがあるんです。どこへ行っても冷房の効きすぎた今の季節は、特に注意が必要です。

──心筋梗塞や脳卒中といった重篤なものは怖いですね。血流障害が起きる仕組みを教えてください。



夏に発症数がいちばん多い脳梗塞を例に挙げて説明しましょう。

脳の血管が詰まることでその先に血液が流れず、酸素や栄養が届かなくなる。それによって脳の一部が壊死するが脳梗塞ですが、脳の血管が詰まる理由は2つあります。1つは「動脈硬化」によって血管が狭くなるため。そしてもう1つは、「血栓」といわれる血の塊が剥がれ、血管が詰まることで起こります。

動脈硬化は生活習慣やストレス、加齢が主な原因ですが、血栓は夏の脱水と激しい温度差に起因するんです。

──やはり夏に脳梗塞がいちばん多いのは、脱水と温度差が理由なんですね。

これだけ暑い日が続くと、汗や尿で水分が失われますよね。そうするとカラダは脱水状態になり、ドロドロになった血液に血栓ができるんです。

温度差10℃以上でヒートショックの高リスク



──激しい温度差は何がダメなんですか?

猛暑日は屋外と屋内の温度差が激しいですよね。たとえば、38℃ある屋外から、カフェに入るとします。そして、そのカフェの室内温度は22℃に設定されているとしたら温度差は16℃。ヒートショックは温度差が10℃以上になったら、高リスクなんです。

──カフェに限らず、電車もスーパーも、結構冷えていますよね。10℃以上のシチュエーションは多いと思います。

暑い屋外にいるときは体温の上昇を防ぐため、血管が拡張されて血圧を下げようとします。逆に冷えた屋内に入ると、今度は血管を収縮して血圧を上げようとする。温度差が激しければ激しいほど、血圧は上がったり下がったり、乱高下するんです。



──なるほど。血圧が乱高下すると、どうなるんでしょう。

乱高下すると何が起きるかというと、血圧が急に下がると血流がよどみ、血栓を作りやすくなります。一方、血圧が急に上がると、血流の勢いが増すことで血管にできた血栓が剥がれやすくなる。

剥がれた血栓が脳の血管を詰まらせれば脳梗塞になりますし、心臓の血管を詰まらせれば心筋梗塞を引き起こします。これがヒートショックの重篤なケースです。

──難しい話ですが、とにかく血圧を乱高下させないのが大切なんですね。

そうです。脳梗塞だけじゃなく、脳出血やくも膜下出血も夏のヒートショックで起こり得ます。予防は血圧の乱高下を起こさせないこと。これに限ります。
ヒートショックの症状と原因をおさらい 

・軽度のヒートショックだと、頭痛やめまい、失神を引き起こす。重度の場合は、心筋梗塞や脳卒中に至る。

・特に注意したいのは、血栓によって起こる血管の詰まり。夏に起こりがちな脱水症状が大きな原因となる。

ヒートショック予防で最も効果的なこと



──対策を早速、教えてください!

気温差が10度以上になると、ヒートショックのリスクが高まるので、先ほど例にあげた、屋外と屋内の温度差16℃というケースは最悪です。冷房の効きすぎた屋内は多く、事業者も個人も、リスクについて無自覚な人が多いので心配です。

まず、心がけてほしいのは極端に「寒いっ!」、「暑いっ!」とカラダに思わせないようにすること。

──それは、感覚的に覚えやすいですね。

冷え切った電車やスーパー、カフェなどでは、私は常に何か1枚を羽織るようにしています。また、冷えた部屋から外出するときは、首に冷却グッズなどを巻くし、外に出たら日傘をさすようにしています。



──多くの人が普段から取り入れている対策ですね。

大切なのは、温度差が起きる前に対策を取っておくこと。温度差を感じる瞬間がいちばん危ないので、屋内へ入る前に1枚羽織ったり、玄関を出る際に冷却グッズを身につけられると安心です。

──自分で使うエアコンに関して、注意点はありますか?

これもやはり、外の気温と10℃以内の温度差にしておくことです。外から帰ってきて、20℃を切るような温度で一気に部屋を冷やそうとする人がいますが、それは間違い。外が38℃なら30℃程度でまず体を慣らしてから、徐々に冷やすのが正解。

そうすれば、血圧の乱高下を防ぐことができます。室温が高い車に乗り込むときも、同じ要領で温度設定に注意しましょう。

ヒートショックを未然に防ぐ、ポイントまとめ 

・エアコンの設定温度は、外気温と10℃以上の差がつかないようにする。

・極端な温度差を感じる前に、羽織モノや冷却グッズ、日傘を活用する。

それは危険だった!? 運動後のクールダウンに注意



──先生がいちばん懸念するシチュエーションを教えてください。

やはり脱水状態になった“後“は、特に注意が必要ですね。例えば、運動して汗をかいた後に冷房がガンガン効いた部屋に入るのは危険なので、やめてください。

まずは汗をしっかり拭きましょう。汗をそのままにして冷房にあたるとカラダは一気に冷え、血管にかなりの負荷がかかります。あとは、脱水を是正するために多めに水分を取るのもおすすめです。

そして、冷えた部屋では1枚羽織ること。タオルを肩にかけるだけでも違います。こうすれば、急激な血圧の変化は生じにくいと思います。



──水分というのは塩分入りがいいですか?

熱中症対策のひとつに「塩をとりましょう」というのがありますが、塩の取り過ぎは血圧を上げるのでヒートショックの原因にもなり得ます。

血圧の数値が普段から正常な人はいいですけど、血圧が高めの人、持病がある人は、塩分入りのスポーツドリンクではなく、麦茶などがおすすめです。

──ちなみに、アルコールで血圧が上がると、ヒートショックのリスクも高くなりますか?

アルコールを飲むと血管が拡張するので、血圧の乱高下は起こりやすいです。でも、それよりもアルコールを飲むと利尿作用で脱水状態になることの方が危険でしょう。先ほど、説明したとおり、脱水になると血栓ができやすいので。

夏はチェイサーを用意して、アルコール濃度を上げすぎないように心がけてください。



──最後に30〜40代の読者にひとことお願いします!

血圧に問題がない、動脈硬化もないっていう、まさに健康体っていう人がヒートショックを起こす危険性は低いです。ただ、自分は健康だと思っていても、実は血圧や血管に問題を抱えている人はいますし、寝不足や過労、ストレスによる自律神経の乱れでも、血圧が乱高下することはよくあります。

そこに、脱水や激しい温度差といった条件が加われば、健康な人でも夏のヒートショックのリスクはゼロではありません。今回お話したシチュエーション別の対策は、ぜひ参考にしてもらいたいです。

知らず知らずのうちに脳梗塞のリスクを高めないために、先生の助言をヒントに行動するべし。並行して、普段の食事で強い血管を作ることもできるという。

おすすめの3大食材は、血液をサラサラにする「サバ缶」に、クエン酸で血圧を安定させてくれる「レモン果汁」。スルフォラファン(ファイトケミカルの一種)の抗酸化作用で、血管を錆びつかせる活性酸素を一掃する「ブロッコリースプラウト」とのこと。



もとから血圧の高い人はなにより減塩が必要で、塩味を強く感じさせるレモン果汁の酸味は特におすすめだそう。ブロッコリースプラウトは刻むとスルフォラファンの吸収率がアップするので、薬味などに活用するのもぴったり。食事にもぜひ、気を遣いたい!

ぎぎまき=取材・文

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