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 ただの食べ物ではない日本人とお米の関係


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「お米ひと粒には7人の神様がいる」という表現に驚いた。僕がまだ白米に慣れていなかった頃に日本人から教えてもらった言葉だ。人によっては30だと言う人もいた。日本ではお米は神様からの贈り物だと聞いて、言葉を失った。

日本の歴史では、お米はただの食材ではなく年貢の支払いに使われていたり、武士の権力の象徴だったりしたそう。お米は日本人にとって精神的にも重要な役割だった。

それだけではなく、僕が現在住んでいる石川県には、お米を含む農作物の神様に対して感謝する儀式があると知って、やっぱり僕はここに呼ばれたんだと感動した。それが、石川県の奥能登に伝わる「あえのこと」。田の神様を自宅へ招き、豊作の感謝と来年の豊穣を祈る農耕儀礼のことである。
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ユネスコ無形文化遺産にもなっているこの儀式は、12月に正装した家の主が、目に見えない田の神様を家に招き、風呂を勧め、食事を供してその年の収穫に感謝する。そして年を越して2月頃になると神様を田に送り出す。お米を神聖な存在として扱う、日本人の素晴らしい価値観のひとつだ。

金沢で食べた色鮮やかな野菜定食。

金沢で食べた色鮮やかな野菜定食。


だから、日本の白米にこんなに感動するんだと分かった。白米が苦手だった僕が食べられるようになり、そして大好きになったのは、神様の存在を知ってからだった。お米を絶対に残さず食べることが、作ってくれた人や神様に対する感謝を表すことは、白米だけではなくほかの食材についても言える。
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