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すべての写真を見るOCEANS読者ならあらためて説明するまでもないかも知れないけれど、ビルケンシュトックがZ世代を中心に人気だ。なかでも二枚看板の「ボストン」と「アリゾナ」は別格で、売り場に並べるなり飛ぶように売れていくという。
クロッグの「ボストン」が飛躍したのは2010年代。3.1 フィリップ リムやアンダーカバー、サカイといった名だたるブランドと立て続けにコラボレーションしてその存在を知らしめることに成功した。ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』の撮影中にサラ・ジェシカ・パーカーがグッチのロゴをまとった「ボストン」らしきサンダルを履いていたことも拍車をかけた。
「ボストン」2万4200円／ビルケンシュトック（ビーミング ライフストア by ビームス ららぽーとTOKYO-BAY店 047-436-6500）
ツーストラップの「アリゾナ」といえば、映画『バービー』（2023年公開）の印象は鮮烈だ。劇中、もっとも重要な役割を担った小道具が「アリゾナ」だった（ビルケンシュトックはスポンサーではなかったにもかかわらず！）。
こちらはヴァレンティノ、ステューシー、ディオール、マノロ ブラニクらがコラボの相手に指名した。第91回アカデミー賞授賞式でプレゼンターを務めたフランシス・マクドーマンドが晴れの舞台に選んだのはヴァレンティノのロゴが刻印された「アリゾナ」だった。
「アリゾナ」1万8700円／ビルケンシュトック（ビーミング ライフストア by ビームス ららぽーとTOKYO-BAY店 047-436-6500）
この2モデルのエクスクルーシブカラーを仕掛けたのがビーミング by ビームスである。コンクリート・グレイと名づけられた色で染めたベロアとオイルドレザーのコンビネーションがそれだ。
トーナルな雰囲気を醸し出すブラウン見えのグレイッシュなカラーリング、そこに奥行きをもたらす素材の切り替えを見どころにあげているが、まったくもってその通りである。
もとよりビルケンシュトックの色出しには定評があった。聞けば製品企画チームには専属のカラリストがおり、デザイン担当者と二人三脚でものづくりにあたっているという。
コンフォートシューズのパイオニア
エンターテインメントでの露出やインフルエンサーの熱狂がその盛り上がりに一役買ったのは間違いない。しかし忘れてはならないのが、そもそもビルケンシュトックには時代を超えるポテンシャルがあったということである。
その歴史が始まったのは1774年。ヨハネス・ビルケンシュトックがシューマイスターとして教会に登録された年だ。この男こそ、ビルケンシュトックの創始者である。
ブランドの代名詞であるフットベッドを考案したのは曽孫のコンラッド。1902年のことだ。そしてコンラッドの息子、カールが1932年、足の治療を目的としたトレーニングプログラムを考案、コンフォートシューズ大国ドイツを牽引する企業となった。
それにしても“フットベッド”は言い得て妙なネーミングだった。アーチ（土踏まずを構成する弓なりの形状のこと）をサポートするその起伏に包まれると、たしかにベッドに横たわったような安心感が得られる。
ビルケンシュトックが最初にファッションシーンを席巻したのは1970年代。顧客はヒッピーに代表されるサブカルチャーの面々だ。ドイツ系アメリカ人、マーゴット・フレイザーがビルケンシュトックをカリフォルニアに持ち帰り、自然食品の店に並べたのがとっかかりとなった。それが、1973年に誕生した「アリゾナ」だった。「アリゾナ」から遅れること3年、1976年に完成させたのが「ボストン」である。
感嘆せざるを得ないのは、いまなおそのサンダルは要のフットベッドをはじめとして、ほとんどの製造を国内で賄っていることだ。ビルケンシュトックはラインラント＝プファルツ州、ノルトライン＝ヴェストファーレン州、バイエルン州、ヘッセン州、ザクセン州に自前の工場を構える。
公式サイトによれば、ビルケンシュトックはおよそ5500人の従業員を雇っている。その数はドイツ靴業界に従事する労働者の4人に1人（！）が働いている計算になるという。
健康からアプローチした揺るぎない思想とその思想を具現したマスターピースをもち、そして地場産業の担い手として雇用も支える。タッグを組もうとエッジィなブランドが長い列をつくるのももっともである。
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