あの船が“他人事”でなくなった夕暮れ
© 2025『フロントライン』製作委員会
――2020年2月、ダイヤモンド・プリンセスを実際に目にしたそうですね。当時、報道は目にしていたけれど、どこか遠い世界の出来事のように感じていました。でもある日、たまたま横浜で、停泊している姿を実際に見たんです。
静かな夕暮れの空に溶け込むように浮かぶ光景は、映画のワンシーンのようでした。きらきらと優雅に輝く姿と報道で語られる深刻さが交錯し、現実の重みが胸に迫ってきたことを覚えています。
© 2025『フロントライン』製作委員会
――映画『フロントライン』は、ダイヤモンド・プリンセス号の内部で奮闘した人々の姿を描いています。出演が決まったときの思いで意識されたことはありましたか?今の日本で、あの出来事をこんなに大きな予算で挑戦できることにとても驚きました。このような機会をいただけたことは、俳優としてとても幸せなことですね。
同時に「どんな映画を目指すべきなのか」「何を伝えるべきなのか」とさまざまな問いが込み上げてきました。世界中を巻き込んだパンデミックは、誰にとっても等しく、他人事ではなかったと思います。
脚本を読み進めるうちに、あのパンデミックによって何を失い、何を得て、何を学んだのか、止まっていた記憶や感情が少しずつ呼び起こされていく感覚に陥りました。そして、DMATの知られざる奮闘を知り、彼らの世界への献身に心から勇気づけられ、深く胸を打たれたんです。
どのように仕事をして、患者と接し、未知のウイルスと向き合ったのか。彼らの知られざる苦悩や献身について学び、身体を使って伝えなければと思いました。
――コロナ禍をとおして、何を感じていたのでしょうか?変わるはずがないと思っていたもの、常識、多種多様なことが根底から覆されました。生活や人生、そして仕事について……とにかくすべての根底が揺らぎ、当たり前や本質について問い直すような時間だったと思います。
先の見えない暗闇に包まれていたあのとき、さまざまな社会問題も表出し、世界がひっくり返るような時間を僕たちは経験していた。それでも“未来に光を灯し続けてくれていた”医療従事者の方々に対しては、畏敬の念しかありません。
3/5