見せる戦いから、“ともに生きる”格闘技へ

「ファンともフラットな関係でいたいんです。同じ人であり、同じ時代を生きてる“仲間”みたいな存在でいたい。今は僕のことを、深く知ってもらうフェーズに入ったと思います。ただ“知ってもらう”というより、『一緒に生きていこう』っていう感覚に近いです。
心の持ち方や気持ちの部分で共感してくれるような関係性を大切にしたい。あなたの中に、俺が“お守り”のような存在になれたらうれしい。そんな感じですね」。

天心は、リングの上だけに生きる格闘家ではない。YouTubeで日常を見せ、言葉を綴り、ラジオで声を届ける表現者だ。マルチな活躍を見せる根底には、ある“もどかしさ”があった。
「最近の社会って、心が通ってないなって思うことが多いんです」。
スマホ越しのつながり。数字や評価がすべてを決める空気。情報は溢れているのに、本音や温もりが、なかなか見えない。天心はそんな時代の流れに、一歩引いた距離感で向き合っているようだ。
「目に見える数字じゃなくて、自分の中にある気持ちを大切にしたい。だから最近は、伝えるというより、生き様で示すことを意識しています」。
それは、自身の個展『関係ないっしょ気持ちっしょ‼︎展』にも通じる姿勢だ。言葉を尽くして伝えるよりも、体ごとぶつけるように“本気”を見せる。

「最近って、何かやるたびに“説明”が求められるじゃないですか。でも、説明されない部分から、直感的に感じ取ることも大切だと思うんです」。
テレビも解説や分析が主流になり、感情の余白に入り込む“間”が少なくなってきた。そうした状況の中で、天心は「MCではなくプレイヤー」であり続けることにこだわっている。
「芸人さんもそうですよね。現場から離れてMCになると、立場も変わってしまう。でも僕はずっと“前線”で何かを生み出す側でいたい。それが、自分のスタイルなんです」。
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