「GEL-Biz」の靴型2型を製作した倉本尚幸さん。鉛筆の影を靴型に落とし、滑らかな曲面が実現できているかを確認する。入社8年目、手作業の靴型作りを知る世代だ。
「以前は手作業で靴型を削り出していました。木材に型紙を転写し、電動ノコギリで成形して、ヤスリで仕上げる。
でも今はCADで精密に設計して、3Dプリンタで仕上げます。甲とトウが滑らかにつながっていて、かつ、メリハリのあるフォルムを目指しました」(技術チーム・倉本尚幸さん)。
倉本さんいわく「コロナ禍を経て、テクノロジーが一気に加速した感があります」。以前は手作業で削り出していた靴型も、現在では3Dプリンタにより、圧倒的な速さで完成にいたる。
3Dプリンタで製作した靴型を、3Dスキャナーでスキャニング。長さ、幅、足囲、甲の高さから踵の幅まで、あらゆる部位のサイズが即座に数値化される。以前は手作業で採寸していたのだとか。
履きやすく歩きやすいのは大前提。そのうえで装いに美しく馴染む「GEL‐Biz」の靴型には、ファッションの視点も十分に反映されている。
「感度の高いセレクトショップのバイヤーさんにも、たくさんの意見を伺いました。オケージョンを選ばず、かつスタイリッシュに見える靴型ができたと思います。
お客様が手に取ったときに『いいな』と思ってもらえたら、本当にうれしいですね」(プロダクト戦略チーム・西川雅俊さん)。
最新のテクノロジーと、長年培ってきた靴作りのノウハウ。そして今の革靴に求められる時代性。その3つが融合して「GEL‐Biz」という新たな靴が生まれたのだ。
素材の強度をテストする専用のメカ。アッパー用のレザーをはじめ、試験室ではさまざまな素材が日々“引っ張られて”いる。もの作りとは地道な作業の積み重ねにほかならない。
加えてもうひとつ西川さんが教えてくれた“工程”も、「GEL‐Biz」誕生の重要なピースだと感じた。
「新しい靴ができると、その靴型に近い足の社員がフィッティングします。『つま先が当たる』『幅が広すぎる』など、あれこれ注文……いや、製品のために忌憚のない意見をぶつけてくるんです(笑)」。
靴に携わる誰もが同じ方向を向いている。真摯なもの作りとはつまるところ、こういうことなのである。
[問い合わせ]アシックス商事 お客様相談室0120‐777‐591https://walking.asics.com