常春|トキキル クリエイティブディレクター
当記事は「Forbes JAPAN」の提供記事です。元記事はこちら。 2024年12月24日発売の
「Forbes JAPAN」2月号では、国内外の賢人たちによる「2025年総予測」を特集。
本稿では、「2025年の注目市場」として、“解けないと買えない”アパレルブランド「トキキル」の常春が手がける、コミュニケーションツールとしての「謎解き」を紹介する。
一般的なクイズとは違い、ひらめきを重視した問題を解く「謎解き」。言葉遊びや法則を見つけるもの、イラストを使ったものなど、幅広い世代が楽しめる遊びだ。
2000年代からエンタメのいちジャンルとして確立し始め、2008年創業のSCRAPによる「リアル脱出ゲーム」の登場で市場が拡大した。そこからコロナ禍の外出制限によって一時下火になっていた謎解きが今、新たな局面を迎えている。「遊び」にとどまらず、ビジネス領域でも新しいコミュニケーションツールとして注目が集まっているのだ。
けん引するのが、“解けないと買えない”アパレルブランド「トキキル」を手がける常春。2年前に始動したトキキルは、Tシャツやパーカーといった商品に隠された謎を解かなければ買うことができない服屋で、ポップアップショップを中心に販売している。
入店するには商品引換券を含む9,000円の入場チケットを購入する必要があり、謎が解けなければ買えない可能性があるのにもかかわらず、毎回チケットが即完するほどの人気だ。
常春がデザインを手がけたトキキルのTシャツ。この商品は、プリント部分に隠された「謎」を解くと購入できる
「ただ商品を買ってもらうのではなく、購買プロセスや購買時の(顧客の)気持ちの動きを大切にしたい」
常春はトキキルの狙いをそう語る。店舗では、欲しい洋服のディスプレイを見てアプリ上に謎解きの答えを入力し、正解すれば購入へと進める設計になっているが、謎が解けないときには周囲のスタッフに助けを求めることができる。
「一般的なアパレルの店舗では、スタッフが商品の素材やデザインについて詳しく説明してくれますよね。ですが、人によってはそうしたコミュニケーションに緊張したり障壁を感じたりすることもあります。それが“謎解きのヒントをもらう”という題目であれば、自然と会話できるんです。なので、トキキルはあえて問題のレベルを高くして、スタッフとお客さまがコミュニケーションをしながら解いてもらえるように設計しています」
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