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アートを通して触れる“海洋科学”の大切さ



「SEA BEYOND」プロジェクトは、常にアートとカルチャーも重視してきた。

今回の会場には、環境写真家でアーティストのエンツォ・バラッコさんが撮影した作品がぐるりと囲むように展示された。いずれもハワイのダイナミックな海が美しく切り取られており、見る者を魅了する。

バラッコさんは、影響力のある著名人たちが名を連ねる「SEA BEYONDer(シービヨンダー)」の一員でもあり、アートフォトを通して「SEA BEYOND」のメッセージを伝え続けている。
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「写真には、複雑なストーリーを伝える力があると信じています。そこに翻訳は要りません。どんなデータや数字にもまさる即時性と説得力を、写真は持ちうるのです」(バラッコさん)。

パラッコさんはエミー賞にノミネートされた経歴を持ち、ニューヨークのMoMA(メトロポリタン美術館)やロサンゼルスのLACMA(カウンティ美術館)などにも作品が収蔵されている世界的な写真家だ。

アートフォトとしてのみならず、その写真は科学雑誌にも取り上げられるなど、気候変動を計る指標のひとつとしても機能している。



もっぱら大自然と対峙し続けている彼だが、実はキャリアのスタートはファッションフォトグラファー。ロンドンとニューヨークを行き来しながら10年ほどファッション写真を撮ってきた。

スタジオの中ですべてがコントロール可能なファッションフォトと、まるでコントロール不可能な自然のなかで撮るネイチャーフォト。

真逆のアプローチだが、偶然ロンドンの本屋で見つけたアイルランド人の南極探検家、アーネスト・シャクルトンの本が、彼の人生とキャリアのすべてを変えた。「非常に感銘を受けました。それで自分も南極探検に行こうと思ったのです」と回想する。

美しい海に囲まれたシチリア生まれのバラッコさんは、幼い頃から何らかの形で海の魅力を伝えたいという思いがあったようだ。まず絵を描きはじめ、次にカメラを手にするようになった。

実はファッションフォトグラファーになる前に、彼は地元のシチリアで一度個展を開いたことがある。

「そのときのテーマも、やはり海でした。これはとても長い愛の物語です。海からもらったものを、今度はお返ししたい。そして皆に伝えたいという思いで活動をしています。私たちは今、海を愛しなおす必要があり、私の作品がそれを思い出すきっかけになることを願っています」(バラッコさん)。
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「国連海洋科学の10年」、達成にはこの5年が勝負



国連主導で2021年にスタートした「持続可能な開発のための国連海洋科学の10年」は、海洋科学の世界にとって特別な計画で、目標達成のゴールは2030年に設定されている。

「私たちのタイムラインは、『国連海洋科学の10年』のゴールを見据えています。来年はその折り返し地点に入る。残る5年で官民連携をさらに広げ、海洋の研究と理解を深めなければいけません。なぜなら、海洋はまだまだ未知の存在だからです。そこには語られるべき無数のストーリーがあります。
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未来への希望を伝えることも重要です。解決策を見つけるために人生を捧げている人々は、たくさんいます。今、地球上で起きているネガティブな事柄ばかりに注目するのではなく、ポジティブな変化に目を向けたコミュニケーションを重ねていく必要があります」(サントロさん)。
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