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トニー・レオンの怪演は必見

本作は、いち企業が汚職、不正会計、詐欺、果ては殺人などを行った香港史上最大級の企業犯罪といわれる1983年の「佳寧案(キャリアン事件)」をモデルとしているが、そのグループのボスを演じたトニー・レオンの怪演は強烈な印象を残す。

彼自身、「あれほど派手で破天荒な人物を今まで演じたことがなかったからチャレンジだった」と語るほどにクセの強い人物となるが、そんな人物を嬉々として演じており、第42回香港電影金像奨の主演男優賞を受賞したのも納得の存在感だ。そしてそれを静かな演技でしっかりと受け止めるアンディ・ラウとの対比も面白い。

 物語の設定上、互いの存在を知らない状態だった【インファナル・アフェア】に比べ、本作ではふたりの芝居のやり取りもより多く披露している。©2023 Emperor Film Production Company Limited All Rights Reserved

 物語の設定上、互いの存在を知らない状態だった【インファナル・アフェア】に比べ、本作ではふたりの芝居のやり取りもより多く披露している。©2023 Emperor Film Production Company Limited All Rights Reserved


トニー・レオン演じるチン率いる嘉文世紀グループの最盛期は、まさに香港のバブル絶頂期と重なる。本作の総製作費は70億円超えともいわれているが、その熱狂と狂乱ぶりを完全再現した映像は必見。

ゴージャスで派手な美術、ファッションなどはもちろんのこと、今となっては失われてしまった60年代から90年代にかけての香港の風景を再現したVFXなども非常に見応えがある。

なお、こちらは余談だが、現在の証券取引所は電子化されているが、この当時は手書きで株価を記入している。そんな時代の空気を感じさせるマネーゲームの描写も興味深い。



壬生智裕=文
東洋経済オンライン=記事提供

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