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高校時代、ヒップホップやグラフィティにはまり、美大時代はさまざまなアートに触れてきた崇弥さんだったが、執拗なまでに同じ図形を連ねた絵画やびっしりと色とりどりの糸で刺繍されたテキスタイルの迫力に圧倒された。

崇弥さんから作品を見せられた文登さん、そして2人の友人も「これはヤバい!」「こんなすげえの見たことない!」と衝撃を受け、「るんびにい美術館と一緒に何かしたい」と意気投合。

それぞれの仕事の傍ら、早朝や深夜にオンラインで相談を重ね、「るんびにい」の作家のアートを織り込んだネクタイを商品化するための構想を練り上げた。

「作家の幸せが第一」

文登さんは「るんびにい美術館」のスタッフと作家のもとに足を運び、自分たちの思いや構想を伝えてきた。作品をどんなアイテムに仕立てるのかを丁寧に説明したうえで、作家たちが喜んでくれる商品を世に出すためだ。

「るんびにい」の作家さんと松田さんたち(写真:ヘラルボニー)

「るんびにい」の作家さんと松田さんたち(写真:ヘラルボニー)


作家たちと関わる中で、彼らが兄の翔太さんと同様、日々の中で強いこだわりを持っていることがわかった。それゆえに描き続けられる同じモチーフなどが、作品の持つ力強さや奔放さといった強いオリジナリティになっている。

言葉によるコミュニケーションが難しい作家も多いが、何度も顔を合わせ話をするうちに、文登さんの訪問を歓迎してくれるようになった。そして、商品のデザインを楽しみにしてくれている、と感じることも増えた。

一方で、自分の作品が商品化されることをどう思っているのか、長年一緒にいるスタッフでも、わかりかねることもあったという。

「そういうときは“待つ”こともあります。その瞬間だけで私たちの論理で判断することが、作家さんの幸せを摘み取ってしまうことがあってはならない。僕たちはいつでも作家さんの幸せを第一に考えてきたし、それが変わることはありません」。

 異彩作家・工藤みどりさんが描くアートを採用した、岩泉ヨーグルトアルミパウチパッケージ。今年6月、限定販売された(写真:ヘラルボニー)

 異彩作家・工藤みどりさんが描くアートを採用した、岩泉ヨーグルトアルミパウチパッケージ。今年6月、限定販売された(写真:ヘラルボニー)

石川県金沢市の酒蔵・福光屋とコラボレーションした純米吟醸。10代の異彩作家として注目を集める同市出身の作家・輪島楓さんの作品をラベルに起用した(写真:ヘラルボニー)

石川県金沢市の酒蔵・福光屋とコラボレーションした純米吟醸。10代の異彩作家として注目を集める同市出身の作家・輪島楓さんの作品をラベルに起用した(写真:ヘラルボニー)




手塚さや香=文
東洋経済オンライン=記事提供

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