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人間形成された、父親との修行時間

丸鶴の「しっとりチャーハン」は、絶妙なしっとり食感とコショウのアクセントが効いた店を代表する人気メニュー。板橋の町中華でありながら、遠方からわざわざ訪れるファンも多い。

「テレビやYouTubeに出たこともあり、『しっとりチャーハン』を求めて全国からお客さんが来てくれていました。連日行列が絶えず、親父も1日中鍋を振っていましたね。

そんな無理が祟ったのか、2021年の夏に店で倒れてしまったんですよ。僕も独立して仕事も増えた頃だったので、さすがに店は継げない。ただ自分なりの恩返しとして、チャーハンの味を残そうと冷凍食品の開発に乗り出したんです」。

町中華のレジェンドともいわれる、丸鶴の「しっとりチャーハン」。写真=本人提供

町中華のレジェンドともいわれる、丸鶴の「しっとりチャーハン」。写真=本人提供


父親に自分の思いを伝えると、条件付きで承諾してくれたという。

「まずは冷凍チャーハンを商品化していいかを相談しました。親父は、『作ってもいいけれど、お前がまずチャーハンを作れるようになんなきゃやらせないよ』と。自分が作れなくてどうやって製造メーカーと話しするんだというんです。親父のいうことは、もっともだったので『修行に入らせてください』とお願いしました」。



店は継がないと家を飛び出して四半世紀、城咲さんは再び父親のもとで住み込みの修行に入った。

「毎朝4時半に起きて厨房に立ちました。親父は以前に比べて優しかったけれど、包丁の使い方から直されましたね。『真っ直ぐ立ちなさい、道具に思いやりがない』と。うちは醤油の煮方からチャーシューもすべて手作りなので一から学びました」。



この修行はどんな経験にも勝る、人生の学びだったという。

「親父の元で修行した2カ月で、僕の人間性は本当の意味で形成されたと思います。ごまかさず、ぶれず、曲がったことはしない。親父の仕事っぷりは生き様そのものでした。

僕自身、結婚して意識が変わったというのもありますが、親父はこんなに大変な仕事をして自分を育ててくれていたのかと思うと、改めてその偉大さを感じました。

あるとき、親父に飲食店で一番大事なことは何か?と聞かれたんです。僕は『お客さんの笑顔、美味しかったの言葉』と答えました。でも親父は『そうじゃない、仕込みだ』と言うんです。仕事の9割は仕込みで決まるんだと」。

修行中の様子。悪戦苦闘する姿は「見たことないくらいカッコいい」と妻の加島ちかえさんから褒められたという。写真=本人提供

修行中の様子。悪戦苦闘する姿は「見たことないくらい格好いい」と妻の加島ちかえさんから褒められたという。写真=本人提供


「親父の言葉でハッとしたのですが、思い返せば自分も同じことしてたんです。ホストではその日来るお客さんを把握して、前回とネクタイが被らないように身なり整えて、喋る内容も万全に準備をしていた。TVショッピングの仕事でも工場に視察行って、製品を語れるようにあらゆる資格も取って仕込みに時間と労力をかけていたんです」。

幼い頃から父親の背中を見て育った城咲さんは、無意識にその姿勢を見習っていた。丸鶴の冷凍チャーハンも、十分に仕込みをした末に完成。全国の人が丸鶴の味を楽しめるようになった。

丸鶴冷凍チャーハン通販はこちら! QRコードからも注文可能。

丸鶴冷凍チャーハン通販はこちら! QRコードからも注文可能。


「10月19日(土)、20日(日)に地元の『第53回板橋区民まつり』で、妻と一緒に初めてチャーハン販売をする予定です。多くの人にチャーハンを味わっていただける機会に、今からワクワクしています」。


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